飛行禁止空域 (イラク)

イラク飛行禁止空域

イラク飛行禁止空域は、1991年の湾岸戦争終結後、イラク国内における軍事活動を制限するために設定された空域です。この空域は、イラクの北緯36度以北と、後に拡大された北緯33度以南の地域を対象とし、アメリカ合衆国が主導して実施されました。

制定の背景

1991年4月5日、国際連合安全保障理事会は、イラク国内の少数民族クルド人の保護を目的とした決議688を採択しました。この決議を根拠に、アメリカはイラク軍機の飛行を北緯36度線以北で禁止すると宣言しました。しかし、決議688自体には飛行禁止空域に関する具体的な規定は含まれておらず、イラク政府はこれを主権侵害として強く反発しました。

1992年8月、アメリカはイギリス、フランスの協力を得て、ロシアの承認のもと、北緯32度以南にも同様の措置を適用することを発表しました。この作戦は「サザン・ウォッチ作戦」と名付けられ、イラク南部で多数を占めるシーア派ムスリムの保護を目的としていました。この際、アメリカは民間機を含むすべての航空機に対し、違反した場合は撃墜すると警告しました。

イラクの反発と軍事衝突

イラク政府は、飛行禁止空域の設定を主権侵害として非難し、1992年末には空軍基地から戦闘機を飛行させたり、地対空ミサイルを配備するなど、空域内での活動を強めました。これに対し、アメリカ、イギリス、フランスの連合軍は、1993年1月に制裁としてイラクの軍事拠点を空爆しました。さらに1996年9月には、アメリカが南部の飛行禁止空域を北に1度拡大し、北緯33度以南に設定しました。

飛行禁止空域の解消

イラク飛行禁止空域は、2003年3月に始まったイラク戦争とその後の占領によって、その役割を終え、解消されました。

関連事項

イラク武装解除問題

外部リンク

『飛行禁止空域[イラク]』 - コトバンク

もう一度検索