飛龍 (空母)

航空母艦「飛龍」について

「飛龍（ひりゅう）」は、大日本帝国海軍の中型航空母艦であり、その運命は1942年のミッドウェー海戦において悲劇的に決定づけられました。彼女は、昭和9年度の海軍軍備補充計画に基づき建造され、最初は同型艦の「蒼龍」を意識した設計がなされていましたが、軍縮条約の破棄に伴い、様々な改良が施されました。特に飛行甲板が1メートル広がり、艦幅がわずかに拡大しました。加えて、艦首と艦尾の乾舷も高く設定されることで、波に対する凌波性が向上し、運用効率が改善されたのです。

「飛龍」の特徴には、改装後の「赤城」と同様、左舷中央に配置された島型艦橋があります。これは、艦載機の発艦に際し艦橋が障害となりにくいという設計思想に基づくもので、士官の居住区から艦橋へのアクセスが容易になっています。しかし、実際には左舷艦橋が着艦時にレシプロ機にとって障害になることが明らかになり、後の日本空母は右舷艦橋へと変更されました。この変更を受けたのは「翔鶴型」などの艦船であり、「飛龍」は建造がほぼ完了していたため、その配置がそのままとなったのです。

艦の形状に関しては、「蒼龍」に比べて1層多い4層5甲板が設けられ、艦橋の長さも延長されました。これにより、作戦室などの機能が充実し、「飛龍」は第二航空戦隊の旗艦としての役割を果たすこととなりました。また、機関室や弾薬庫は高い耐久性を持ち、駆逐艦の火器からの防御を備えていますが、飛行甲板の防護は手薄であり、ミッドウェー海戦での喪失に繋がる要因となりました。さらに「飛龍」では、艦内冷房や冷却システムの導入が行われ、快適性にも配慮されています。飛行甲板の後端には、片仮名の「ヒ」という文字が記載され、識別性が向上されていました。

歴史

「飛龍」の艦名は、1935年11月22日、横須賀海軍工廠内で正式に授与され、1936年に起工されました。艤装の開始から竣工に至るまで、彼女には数々の指揮官が任命され、1941年には第二航空戦隊として様々な作戦に従事しました。特に開戦直前には、中国福建省の空爆や南部仏印進駐などの任務に参加し、日本海軍の拡張政策に寄与しました。

太平洋戦争が始まると、「飛龍」は第一航空艦隊の一員として真珠湾攻撃に参加します。攻撃後は、そのままウェーク島攻略やダーウィン空襲などに従事し、戦果を上げる反面、多くの友軍艦を失うという厳しい現実にも直面しました。

1942年のミッドウェー海戦では、南雲長官の指揮のもと、決定的な役割を与えられ出撃します。当日、「飛龍」は数度に渡る攻撃を行い、アメリカの空母に損害を与えるものの、アメリカ艦隊の集中攻撃により深刻な被害を受け、沈没してしまいます。この沈没により、日本海軍は犠牲を強いられ、その後の戦局にも大きな影響を及ぼします。

艦の沈没後、生存者たちは数日の漂流生活を強いられますが、その中から助け出された者もおり、「飛龍」の名は日本負けた艦の中で特に語り継がれています。その後、彼女の慰霊碑が佐世保市に建立され、多くの人々にその存在と足跡が伝えられることとなりました。「飛龍」は、日本の航空母艦の中でもその名が広く知られる存在であり、艦艇としての誇りと悲劇を巧みに象徴しているのです。

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