食用菊

食用菊について

食用菊（しょくようぎく）は、菊の中でも食材として利用される特別な品種です。一般的にショクヨウギクと呼ばれ、食菊や料理菊とも知られています。存在する品種には、料理のつまに使われるつま菊などの小輪種や、花びらのみを食べるために育てられる大輪種があります。観賞用のキクとは異なり、食用菊は苦味が少なく、豊かな風味が求められており、そのために選抜改良が行われています。また、花の色や形状は多様で、「阿房宮」、「蔵王」、「高砂」など、各地で異なる特性を持つ品種が栽培されています。食材としての旬は、主に10月から11月にかけてです。

利用史

食用菊の起源に関しては多くの説がありますが、特に中国の唐代にまで遡ると考えられています。北村四郎氏によると、北方原産のチョウセンノギクと南方原産のシマカンギクの交雑によって成立した可能性が高いとのことです。この品種は天平年間に日本に伝来し、最初は観賞用に栽培されていましたが、江戸時代には食用としても利用されるようになりました。古代中国では、菊は長寿の象徴として珍重され、漢方薬としても重宝されてきました。

奈良時代には「延命楽」や「もってのほか」として知られる食用菊が中国から伝わり、平安時代には「黄菊花」の名前が記録に残っており、江戸時代には『本朝食鑑』に「甘菊」として紹介されています。また、俳人の松尾芭蕉もしたためた句から、彼が菊を愛好していたことが伺えます。

形態・生態

食用菊は多年生草本で、背丈は約50センチから100センチメートルまで成長します。茎はしっかりと分枝し、葉は互生状で深い切れ込みを持っています。花芽は通常、短日条件下で形成され、八重咲きの花が一般的です。観賞用のキクに比べて香りが強く、花弁は厚いのが特徴です。地下茎は晩秋に休眠状態に入り、春になると再び成長を始めます。

効能・栄養素

最近の研究によって、食用菊には解毒作用があることが明らかになっています。株式会社ポーラによれば、体内の解毒物質であるグルタチオンの生成が促進されることが示されています。また、抗炎症作用を持つトリテルペンアルコールが可食部分に含まれています。栄養面では、カロリーが27キロカロリー前後で、豊富なビタミンやミネラルに加え、特にβ-カロテンやビタミンC、葉酸などが豊富です。さらに、紫菊花は抗糖化作用があるとされ、アンチエイジングにも利用されています。

調理方法

食用菊は観賞用の菊に比べて甘みがあり、香りが豊かです。主には、茹でておひたしにする、酢の物や和え物、サラダ、天ぷらや吸い物に使用されます。特に、茹で湯に少量の酢を加えると色が鮮やかになり、苦味が抑えられます。また、花弁を蒸したり湯がいて乾燥させた「菊海苔」などの加工品も人気です。刺身やちらし寿司に添えられることが多く、解毒作用を活かした料理法としても重宝されています。

生産地

日本において、食用菊は特に東北地方や新潟県で盛んに栽培されています。2016年のデータによると、愛知県が最も多く出荷されており、次いで山形県や青森県、新潟県が続きます。愛知県では小菊が主流で、特に刺身のつまとして多く用いられています。山形県では、食用菊の生産が優位を占め、多くの栽培品種が存在します。新潟県では特に「もって菊」や「かきのもと」という品種が有名で、地域の特産品として愛されています。

栽培

食用菊の栽培は春に萌芽が行われ、株分けや挿し芽を通じて増やされます。生育には冷涼な気候と十分な水分が必要で、根が乾燥しやすいため排水の良い土壌が適しています。また、株分けや挿し芽によって育てられた苗は、病害虫対策が必要です。特にアブラムシや根を攻撃するセンチュウは要注意で、見つけ次第、早急に対処する必要があります。

おもな品種

食用菊には、いくつかの人気品種があります。「延命楽」は、明るい赤紫色の花を持ち、味が良いことで知られており、「阿房宮」は知られる大輪種で香りが強いです。また、「十五夜」や「八戸1号・八戸2号」といった品種も存在します。即ちこれらの品種は、日本の食文化の中で重要な役割を果たしています。

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