飯田九一

飯田九一（いいだ くいち）は、1892年（明治25年）10月17日に生まれ、1970年（昭和45年）1月24日に生涯を閉じた、日本の日本画家、俳人、そして俳諧関係資料の収集家として知られています。

生い立ちと画業

飯田九一は、神奈川県橘樹郡大綱村（現在の横浜市港北区の一部）で、江戸時代から続く旧家である素封家の三男として誕生しました。父である飯田快三は、大綱村の村長や神奈川県議会議員を務めた人物で、飯田家の家長が代々受け継ぐ名である助太夫を11代目として襲名し、海山と号した有力者でした。このような恵まれた環境で育った九一は、幼少の頃から芸術に触れる機会が多く、その才能を開花させていきます。

東京美術学校（現在の東京藝術大学）を卒業後、彼はさらに日本画家としての腕を磨くため、川合玉堂に師事しました。その後、帝国美術院展覧会（帝展）などの公募展に積極的に作品を発表し、その才能を広く認められるようになりました。彼の日本画は、伝統的な技法を踏襲しつつも、独自の感性が光るものでした。

俳画への傾倒と指導

画家として一定の評価を得た後、飯田九一は俳画にも関心を抱き、積極的に制作に取り組みました。俳画とは、俳句に絵を添えたもので、日本の伝統的な芸術形式の一つです。彼は自ら「香蘭会」という俳画のグループを主宰し、後進の育成にも尽力しました。香蘭会では、多くの門下生が飯田の指導を受け、俳画の奥深さを学びました。

文化への貢献と資料収集

1952年（昭和27年）には、長年の文化活動が評価され、第1回横浜文化賞を受賞しました。この賞は、横浜市の文化振興に貢献した人物に贈られるもので、飯田の功績を讃えるものでした。また、彼は俳諧関係の資料収集にも熱心で、松尾芭蕉、宝井其角、与謝蕪村らの真筆を含む、数多くの短冊や色紙などを収集しました。これらの貴重なコレクションは、後に神奈川県に寄託され、県史の編纂や研究に大きく貢献しました。

現在、彼の収集した俳諧関係資料は、神奈川県立文化資料館や神奈川県立図書館で管理・保存されており、一般の研究者や俳句愛好家にも公開されています。これらの資料は、日本の俳諧史を研究する上で、非常に重要なものです。

親族

飯田九一の親族には、父の快三の他に、兄に衆議院議員や神奈川県議会議長、大綱村長などを歴任した飯田助夫がいます。飯田家は、地域社会において大きな影響力を持つ名家でした。

まとめ

飯田九一は、日本画家、俳人として活躍する一方で、俳諧資料の収集家としても重要な功績を残しました。彼の作品や収集資料は、今もなお多くの人々に愛され、日本の文化の発展に貢献しています。その生涯は、芸術への情熱と、文化を後世に伝える使命感に満ちたものでした。彼の功績は、これからも長く語り継がれることでしょう。

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