飾磨港駅

飾磨港駅：港湾と消えた鉄道の物語

兵庫県姫路市飾磨区細江に存在した飾磨港駅は、1895年（明治28年）4月17日、播但鉄道の駅として開業しました。当初は『飾磨駅』という名称でしたが、1915年（大正4年）9月21日に『飾磨港駅』と改称されました。これは、1951年までの姫路港飾磨地区の呼称に由来し、駅が姫路港からの物資輸送を主な役割としていたことを示しています。

国有化を経て、官設鉄道の駅となった飾磨港駅は、貨物輸送を基幹業務としていました。最盛期には400～500人の荷役夫が、船と貨車の間を忙しく行き交い、活気に満ち溢れていました。しかし、時代の流れとともに、港湾の貨物輸送はトラック輸送へと移行し始めます。1971年には、港の貨物輸送が完全にトラック輸送に切り替わると、飾磨港駅の貨物取扱量は激減。小口輸送のみをこなす状態となってしまいました。

旅客輸送についても、状況は厳しく、廃止時まで改善されることはありませんでした。朝夕の1往復ずつ、計2往復のみの運行で、単行の気動車が運行されていました。清水港線や名寄本線湧別支線、福知山線尼崎港支線と並び、国鉄時代において旅客列車の運行頻度が少ない区間として知られていました。そのため、旅客輸送面でも低迷が続きました。

駅の構造は、頭端式配置の地上駅でした。短い上屋根を備えた旅客用ホーム1面1線と、2棟の上屋根を持つ貨物ホーム1面1線、そして複数の車両留置線から構成されていました。線路の終端には木造駅舎があり、廃止時まで駅員が配置されていました。駅舎は、貨物輸送の拠点としての役割を反映した、機能的な設計となっていました。

1984年（昭和59年）2月1日、荷物と車扱貨物の取扱いが廃止され、旅客駅へと移行しました。しかし、旅客輸送の低迷は変わらず、最終的に1986年（昭和61年）11月1日に飾磨港駅は廃止となりました。

駅周辺には、姫路港、姫路ポートセンター、国道436号、兵庫県道540号飾磨港線、飾磨臨海大橋、そして神姫バスの停留所「姫路みなとドーム前」などがありました。港湾施設と道路網が整備された立地でありながら、鉄道の衰退を食い止めることはできませんでした。

現在は、飾磨港駅の跡地には姫路みなとドームが建っています。2000年（平成12年）5月に竣工した多目的ドームで、テニスなどのスポーツイベントや展示会など、様々なイベントに使用され、地域住民に利用されています。かつて鉄道の拠点であった地は、新たな姿で地域社会に貢献しています。飾磨港駅は、港湾都市の発展と鉄道の衰退という、日本の近代化の一側面を象徴する存在でした。

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