養生訓

『養生訓』の概要

『養生訓』（ようじょうくん）は、1712年に福岡藩の儒学者である貝原益軒によって執筆された、健康や養生に関する指南書です。この著作は、益軒が83歳の時に書かれたものであり、彼自身の実体験に基づいています。主に長寿を全うするための身体的な健康法だけでなく、精神的な養生にも焦点を当てた点が大きな特徴です。

著作は一般に広く受け入れられ、普遍的な生活の知恵として親しまれました。現代でも、岩波文庫や中公文庫、講談社学術文庫などから数多くの版が刊行されています。また、ジョージ秋山による漫画化や英訳など、さまざまな形態で海外にも紹介されています。

書籍の構成

『養生訓』は、全8巻からなっており、それぞれに重要なテーマがあります。

• - 第一巻 総論上: 儒教の思想に基づいて、養生の目的や意義について述べられています。

• - 第二巻 総論下: 健康的な生活のために必要な運動、栄養、休息のバランスについて奨励しています。

• - 第三巻 飲食上: 食事の重要性とその方法について詳しく説明されています。

• - 第四巻 飲食下: 控えめな飲食の実践や、喫煙が健康に与える影響に関する警告が含まれています。

• - 第五巻 五官: 人間の五感の機能や、口腔衛生の大切さについて考察しています。

• - 第六巻 慎病: 「医は仁術なり」という言葉のもと、病気にならないように注意し、信頼できる医者を選ぶことの重要性が説かれています。

• - 第七巻 用薬: 薬の効能とそれに伴う害についての解説があります。

• - 第八巻 養老: 老後の生活の質を高めるための過ごし方が議論されています。

健康観

『養生訓』では、健康を維持し長生きするための「三楽」が強調されています。これは、善行を楽しむこと、健康な生活を楽しむこと、そして長寿を楽しむことです。また、長寿を全うするためには、自己の内外の条件に留意する必要があります。

特に、益軒は以下の四つの欲を抑えることを提唱しています:
1. 食欲の過剰
2. 色欲
3. 無駄な睡眠欲
4. 不必要なおしゃべりの欲

これらの欲を我慢することで、健康的な生活を送るための大きな一歩となります。さらに、季節ごとの温度や湿度に応じて体調を管理し、健康な体で老後を迎えることができると述べています。

益軒自身も、妻と共にこれらの教えを実践し、仲睦まじく長生きしたとされています。このように、『養生訓』は今日の健康維持や一次予防の考え方にも通じる大切な知識を提供しているのです。

参考書籍

『養生訓』の再版や翻訳、解説書が多く出版されており、貝原守一による校訂版が土曜社から2018年に刊行されています。コラムや解説が充実しており、現代の読者にも分かりやすい内容とされています。

関連リンク

• - 養生訓 - 学校法人中村学園
• - 養生訓（抄訳） - 森下ジャーナル
• - 原文『養生訓』全巻 - ウェイバックマシン

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