養蓮院

養蓮院（ようれんいん）は、江戸時代中期に活動した女性で、江戸幕府第10代将軍である徳川家治の側室として知られています。俗名を品（しな）と称し、その出自は半家の藤井家と伝えられています。父は藤井兼矩（かねのり）です。

生涯

お品の生涯は、家治の正室となる五十宮倫子（いそのみやともこ）の江戸下向に随行したことから始まります。寛延2年（1749年）2月、倫子が京より江戸へ下向する際、お品は倫子付きの侍女としてこれに付き従いました。倫子一行は当初、浜御殿へ入りますが、宝暦4年（1754年）に倫子が将軍正室を意味する「御簾中（みすちゅう）」として江戸城西の丸へ移居したのに伴い、お品も共に西の丸大奥へ入りました。ここでは御簾中付きの御中臈（おちゅうろう）という役職に就いたとされています。

ただし、お品の出自や大奥入りの経緯については異説も存在します。別の史料によれば、お品は大奥において権威を持っていた上臈御年寄（じょうろうおとしより）・松島局（まつしまのつぼね）の大姪にあたる人物であり、宝暦5年（1755年）に松島局の養女となった後、五十宮倫子付きの小上臈（こじょうろう）として仕えたと記録されています。このように、お品の出自には二つの系統が伝えられており、その後の大奥での立場にも影響を与えた可能性があります。

宝暦10年（1760年）、徳川家治が正式に将軍職を継承し、それに伴い五十宮倫子が将軍正室を示す「御台所（みだいどころ）」として本丸大奥へ移居すると、お品もまた御台所付きとして本丸大奥へ移りました。本丸大奥へ入った後、後ろ盾であったとされる松島局の推薦を受ける形で、徳川家治の側室に加えられることになります。

側室となった後、お品は将軍の子を産むことになります。宝暦12年（1762年）には、同じく家治の側室であったお知保の方（おちほのかた）が家治にとっての長男・竹千代（後の第11代将軍徳川家斉の父となる徳川家基）を出産しましたが、その年の12月19日には、お品も家治との間に次男・貞次郎（さだじろう）をもうけました。しかし、残念ながらこの貞次郎は翌宝暦13年（1763年）3月、生後わずか3ヶ月という極めて短い生涯で夭折してしまいます。

幼い我が子に先立たれる悲しみを経験した後、お品自身も将軍家治より先に世を去ることになります。安永7年（1778年）10月27日、養蓮院は死去しました。その墓所は江戸・上野にある凌雲院（りょううんいん）に営まれ、法号として養蓮院妙開心華大姉（ようれんいんみょうかいしんげだいし）という戒名が贈られています。

関連作品

養蓮院（俗名：品）は、近年の創作作品においても描かれることがあります。

* テレビドラマ「大奥」（フジテレビ、2024年）：この作品では、西野七瀬が品（養蓮院）役を演じました。

養蓮院の生涯は、正室付きの侍女から将軍側室へと昇り詰めながらも、我が子の早世という悲運に見舞われるなど、大奥という特殊な環境下における女性の人生の一端を示しています。

もう一度検索