香港トラム

香港トラム：100年以上の歴史を誇る路面電車の魅力

香港トラム（香港電車）は、香港島の北部を東西に走る路面電車で、1904年の開業以来、香港の重要な交通手段として、また観光資源として、市民や観光客に親しまれてきました。2階建て車両が特徴で、その愛らしい姿から「叮叮（ディンディン）」という愛称でも呼ばれています。

概要

香港トラムは、筲箕湾（そうきわん）から堅尼地城（ケネディタウン）を結ぶ本線と、跑馬地（ハッピーバレー）に向かう支線で構成されています。現在も2階建ての車両が運行されており、世界でも珍しい路面電車として知られています。運賃は均一で、オクトパスカードまたは現金で支払いが可能です。乗り換え券制度はありません。

歴史

1881年に馬車鉄道の計画が持ち上がったものの実現には至らず、1901年に路面電車の敷設計画が立案され、1904年7月30日に筲箕湾と堅尼地城の間で開業しました。

開業当初は1階建ての車両でしたが、1912年に2階席が設けられ、その後は2階建て車両のみが増備されていきました。1922年には跑馬地支線が開通し、現在の路線網が完成しました。1941年から1945年までは日本の占領下となりましたが、営業は続けられました。

戦後、車両の修復と増備が進められ、1949年には新型車体が登場しました。その後、1961年には広告電車が登場し、1972年には2等制が廃止されました。1980年代には地下鉄（MTR）の開通によりトラムの廃止も検討されましたが、市民の要望により存続が決定しました。現在でも黒字経営を続けており、軌道や停留所の整備も頻繁に行われています。

近年の動き

2000年には新型車両が導入されましたが、車内換気の問題から増備は見送られました。2011年には運賃が値上げされ、2013年には脱線事故が発生しました。2014年には地下鉄の延伸により利用客が減少しましたが、冷房車の導入や優先走行の実施など、サービス強化に取り組んでいます。2016年には観光用車両が登場し、2017年には再び脱線事故が発生しました。

路線データ

• - 路線長:

- 本線（堅尼地城-筲箕灣）：複線13.5km
- 跑馬地支線：単線ループ2.7km
- 全線：15km

• - 停留所数: 123
• - 軌間: 1,067mm
• - 複線区間: 本線の全線
• - 電化区間: 全線（直流550V）

運転系統

以下の6系統が運行されています。

• - 筲箕湾 ↔ 堅尼地城
• - 筲箕湾 ↔ 上環
• - 筲箕湾 ↔ 跑馬地
• - 北角 ↔ 石塘咀（屈地街）
• - 跑馬地 ↔ 堅尼地城
• - 銅鑼湾 ↔ 石塘咀

停留所はほぼ250m間隔で設置されており、各停留所に番号が振られています。起終点となる停留所にはループ線があり、トロリーポールの付け替え無しに折り返す事が可能です。

車両

車体の特色

全車2階建てで、定員115名です。車体の前後両方に運転台がありますが、通常は一方向のみ走行します。車内は1階がロングシート、2階がクロスシートとなっています。屋根にはトロリーポールと主抵抗器が搭載されています。

車体塗装は深緑色が標準ですが、大半は広告塗装が施されています。近年はシール式が主流となっています。

車両の変遷

開業当初は1階建ての車両でしたが、1912年に2階建て車両が登場しました。1949年には鋼製車体となり、1965年にはトレーラータイプの車両も導入されました。1986年からは老朽化した車体の更新が始まり、2000年には新型車両が登場しました。

2009年にはVVVFインバータ制御の新車が登場し、2011年からは在来車の更新が進められています。2014年には冷房車が登場しましたが、現時点では1両のみです。

120号車

120号車は、第4世代の車型を保つ唯一の車両で、古き良き時代の香港トラムの面影を残しています。車内は木製ニス塗りの窓枠や座席、白熱灯の照明が採用されています。

貸切専用車

28号車、128号車、18号車は貸切専用車として運行されています。これらの車両は、初期の2階建て車両を模して改造されており、内装も豪華に設えられています。

観光用車

68号車は、個人旅行客が利用できる観光用車両として整備されています。日本語を含む8ヶ国語対応の音声レシーバーを備え、上環～銅鑼湾間を1日3往復しています。

トレーラー

1965年から1978年まで、トレーラータイプの車両が運行されていました。動力を持たない1階建ての車両で、客車として使用されていました。

国外への輸出車

1992年に2両の車両がイギリスに輸出され、現在もリバプールで運行されています。

その他

香港歴史博物館には、戦後型車両が展示されています。また、アメリカのオレゴン電気鉄道博物館にも、元12号車が保存されています。香港海洋公園には、レプリカ車両が展示されています。

関連商品

香港では、OOゲージのダイキャスト製ディスプレイ模型が販売されています。中国では、OOゲージのモーター付き模型が製造・販売されています。

まとめ

香港トラムは、香港の歴史と文化を今に伝える貴重な存在です。その独特な2階建て車両と、香港の街並みをゆっくりと走る姿は、多くの人々に愛され続けています。香港を訪れる際には、ぜひ香港トラムに乗車して、その魅力を体験してみてはいかがでしょうか。

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