香港住宅委員会

香港住宅委員会とは

香港住宅委員会（Hong Kong Housing Authority）は、香港特別行政区政府が設立した行政機関で、住宅局が実際の運営を行っています。1973年4月の住宅条例に基づき設立され、香港市民への質の高い生活環境の提供を目的としています。

主な事業として、公営住宅の計画、建設、管理があり、その規模は179の公営住宅、76万戸、200万人以上が居住する巨大なものです。委員会の主席は運輸住宅局の長官が兼任し、他の委員は行政長官が任命します。

歴史

1973年、当時の香港総督マクレホースの「十年住宅建設計画」を推進するため、既存の香港住宅建設委員会が再編され、香港住宅委員会が設立されました。この時、移住事務局と都市サービス署の住宅建設科が統合され、住宅局が誕生しました。

当初、政府所有の廉租屋（低家賃住宅）と、移住区が公共住宅として引き継がれました。1978年には、中流階級向けの持ち家制度「住宅所有計画（居者有其屋計劃、HOS、居屋）」がスタートしました。

2000年には、沙田の愉翠苑で、仕様を満たさない杭が使用されていたことが発覚し、建物が解体されるというスキャンダルが発生。同様の問題は元朗の天頌苑でも発覚し、こちらは改修工事が行われました。この問題で、廉政公署は7人を訴え、最終的に2人が詐欺罪で有罪判決を受けました。

管理物件

住宅委員会は、公営住宅の他に、中転房屋（仮設住宅）や、かつては政府所有の高層工場ビルも管理していました。しかし、近年はアウトソーシングが進み、多くの資産管理は民間のマネジメント企業や香港住宅協会に移管されています。ただし、賃貸管理は住宅委員会が引き続き行っています。

2005年以降、住宅委員会は住宅に併設されるショッピングモール、市場、駐車場などの施設を、リンク不動産投資信託基金に売却しましたが、その後、リンクが賃料を大幅に上げたため、住民の怒りを買い、住宅委員会の新築住宅売却計画は中止となりました。

かつて住宅委員会が管理していた主な施設

元住宅建設委員会所有の住宅
元香港モデルハウス協会所有の住宅
元政府所有廉租屋
元・移住事務局所有の住宅
住宅委員会所有公営住宅
住宅所有計画住宅
住宅委員会所有中転房屋

工場ビル

住宅委員会設立以前、移住事務局は、自然災害や政府の土地収容で影響を受けた家庭工場や小規模工場向けに、工業ビルを建設していました。

最初の移転工場ビルは1957年完成の長沙湾工場ビルで、その後、柴湾、佐敦谷などにも同様の工場ビルが建設されました。これらの工場ビルは、多くが「H型」か「I型」の7階建てで、「H型」は中央に公共トイレや浴室を備え、「I型」は両側にトイレが設置されています。

1973年に住宅委員会がこれらの工場ビルを引き継ぎ、さらに9棟の工場ビルを建設しました。新しいタイプの工場ビルは、最大20階まで階数を増やしていました。需要の低下に伴い、住宅委員会は工場ビルの新設を中止し、一部の工場ビルは住宅、学校、オフィスビル、娯楽施設に転用されています。

移住事務局方式の主な工場ビル

長沙湾工場ビル（解体、元州邨・学校に転用）
柴湾工場ビル（改装、華廈邨・華欣楼に）
佐敦谷工場ビル（解体、公園に転用）
大窩口工場ビル（解体、尚翠苑に転用）
新蒲崗工場ビル（解体、景泰苑に転用）
観塘工場ビル（解体、国際貿易センターに転用）
元朗工場ビル（解体、鳳庭苑に転用）
葵涌工場ビル（解体、葵涌邨・百葵楼・合葵楼に転用）

住宅委員会による新デザインの工場ビル

葵涌晋昇工場ビル
葵涌葵安工場ビル
長沙湾宏昌工場ビル
屯門開泰工場ビル
沙田火炭穗輝工場ビル
* 九龍湾業安工場ビル

問題点

1970年から1990年代にかけて、公営住宅には池や噴水が設けられていましたが、多くが撤去・埋め立てられ、2018年時点ではわずか13ヶ所しか稼働していません。住宅委員会は、衛生問題や溺死の危険性を理由にしていますが、実際は管理が面倒であることが指摘されています。

また、同性愛カップルの公営住宅申請を「一夫一妻」の条件に当てはまらないとして拒否したことが、性的差別にあたると裁判所で判断されました。住宅委員会はこれを不服として上訴しています。

まとめ

香港住宅委員会は、香港市民の住宅問題解決に重要な役割を果たしてきましたが、その運営には多くの課題も抱えています。今後、住宅委員会がこれらの課題にどのように対処していくかが注目されます。

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