馬士英

馬士英（ば しえい）

馬士英は、1596年から1647年にかけて生きた明末の政治家です。字は沖然、号は瑶草と称しました。貴竹長官司の出身で、本貫は揚州府儀真県にあります。父は太僕寺少卿の馬明卿、伯父は山西道監察御史の馬文卿という家系でした。

官僚としてのキャリア

1619年（万暦47年）に、馬士英は進士に及第し、官僚としてのキャリアをスタートさせました。彼は厳州府知府、河南府知府、大同府知府といった要職を歴任し、地方行政でその手腕を発揮しました。しかし、崇禎帝の治世中に贈賄の罪で失脚し、一時的に南京に寓居することとなります。その後、政治の世界に復帰し、鳳陽総督という要職を務めました。

南[[明]]の成立と馬士英の役割

1644年（崇禎17年）3月、李自成率いる反乱軍が北京を攻略し、崇禎帝が自殺するという未曽有の事態が発生しました。この混乱の中、明朝の皇族である潞王朱常淓を擁立しようとする動きがありましたが、馬士英は史可法らの意見を抑え、福王朱由崧を皇帝として擁立することを主張し、最終的に福王が皇帝として即位しました（南[[明]]の弘光帝）。

南[[明]]朝廷では、誰を地方に出鎮させるかという議論が起こりました。この際、馬士英は史可法を兵部尚書兼武英殿大学士に推挙し、「督師輔臣之印」を与えて出鎮させました。この人事の裏には、馬士英が自らの出鎮を望まず、史可法を朝廷から遠ざけようとする意図があったとされています。この経緯は、応廷吉の著書『青燐屑』に詳しく記されています。

福王擁立における功績により、馬士英は重用され、内閣大学士に就任し、南[[明]]の政治を事実上掌握しました。政権内では、馬士英が推薦した阮大鋮が権勢を振るい、復社の名士たちから強い反発を招きました。この人事は南[[明]]政権内の混乱を招き、国力を大きく損なう要因となりました。

最期

1645年、清軍が南[[明]]の首都である南京を陥落させると、馬士英は逃亡を余儀なくされました。しかし、最終的に捕らえられ、処刑されるという悲劇的な最期を迎えました。

評価と影響

馬士英は、その政治手腕と策略によって南[[明]]の成立に大きな影響を与えましたが、同時にその専横的な振る舞いと人事が、南[[明]]の滅亡を早めたとする批判も多く存在します。彼の生涯は、明末の激動期における政治家の複雑な側面を映し出すものとして、歴史に深く刻まれています。

参考文献

『明史』巻308 列伝第196 奸臣伝
京都大学文学部東洋史研究室「改訂増補　東洋史辞典」1967年「馬士英」

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