馬鹿が戦車でやって来る

『馬鹿が戦車でやって来る』

概要

『馬鹿が戦車でやって来る』（読み：ばかがタンクでやってくる）は、1964年に松竹が制作・公開した日本の映画で、監督は山田洋次、主演はハナ肇が務めています。この映画は、團伊玖磨の小説『日向村物語』を基に制作され、音楽も彼が担当しました。また、本作は『馬鹿まるだし』『いいかげん馬鹿』に続く『馬鹿シリーズ』の第3作目となっています。

ストーリー

物語は海釣りに訪れた中年男性と若者の会話から始まります。彼らは、海の近くにある「タンク根」の由来を船頭から聞かされます。この「タンク根」とは、かつて変わり者ばかりが住んでいたとされる日永村に関連しています。村には「汚れの一家」と呼ばれる貧しい家族が住んでおり、この家族は少年戦車兵だったサブ、その弟で重度の障害を持つ兵六、耳の不自由な母親・とみの三人で構成されています。

彼らは村の長者である仁右衛門や村会議員の市之進、その他の村人たちとの関係に苦しんでいます。特に、仁右衛門はサブに農地を取り戻そうとしており、これが彼らの間に緊張を生じさせます。しかし、仁右衛門の娘・紀子だけはサブ一家を支援していました。紀子は長い間病床にありましたが、秋祭りの頃に若い医者の新吾の看病を受け、元気を取り戻します。

秋祭りの際、紀子が村に戻ると、サブは彼女の戻りを心から喜びますが、仁右衛門はサブを追い出してしまいます。そのことで腹を立てたサブは、村での悪行を重ね、結果的に警察の世話になることに。そこに目をつけた市之進がとみに金を貸し付け、サブの土地を奪おうとします。数日後、突然サブの家から旧陸軍の戦車が現れ、村を混乱に巻き込みますが、悲劇が待っていました。兵六が誤って火の見櫓から転落し、亡くなってしまったのです。サブは兵六の亡骸を戦車に乗せ、どこかへ去っていくのです。

制作背景

撮影は埼玉県の鳩山村を中心に行われ、その他のシーンは千葉県の房総半島で撮影されました。使用された方言などは監督が独自に考案したもので、特定の地域に依存しない日本の農村を描こうとした意図があります。

また、劇中に登場する戦車「愛國87号」は、旧陸軍の戦車の特徴を活かして改造されたもので、そのデザインはユニークです。特に、砲塔上部に鉢巻きアンテナが見られることから、この戦車は九七式中戦車初期型が参考にされていると言われています。

評価と影響

本作に対しては様々な解釈があり、特に共産主義のプロパガンダ映画へのパロディとしての視点も存在します。さらに、漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』において、主人公がこの映画について語るシーンが描かれ、多くの人に影響を与えてきました。また、アニメ『元祖天才バカボン』のバカボンパパが戦車に乗るシーンは、本作へのオマージュとも言われています。

スタッフ・キャスト

映画の主要なスタッフには、監督・脚本を務めた山田洋次のほか、企画の市川喜一、原案の團伊玖磨、撮影の高羽哲夫などが名を連ねます。キャストには、サブ役のハナ肇をはじめ、紀子役の岩下志麻や、仁右衛門役の花沢徳衛など、多彩な演者が出演しています。

『馬鹿が戦車でやって来る』は、コメディ映画としてだけでなく、日本映画の歴史の中でも意味深い位置を占める作品と言えるでしょう。

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