駅までの道をおしえて

『駅までの道をおしえて』

作家、伊集院静の手がけた短編小説を収録した作品集です。2001年から2004年にかけて、講談社が発行する月刊小説誌『小説現代』に掲載された珠玉の8編が収められています。2004年10月27日に単行本として、その後2007年3月15日には講談社文庫から文庫本として刊行されました。

作品概要

この小説集の中心となるのは、愛するペットを亡くした主人公の少女・サヤカと、彼女が偶然出会う孤独な老人・フセコウタローの間で紡がれる心温まる交流の物語です。深い悲しみを抱えた少女が、老人の優しさに触れ、少しずつ前を向いていく姿が丁寧に描かれています。世代や立場を超えた絆が、喪失からの再生というテーマと共に、読者の心に静かに響きます。

収録作品

本作には、表題作である「駅までの道をおしえて」をはじめ、以下の8編の短編が収録されています。いずれも『小説現代』に発表されたものです。

駅までの道をおしえて（2004年9月号掲載）
シカーダの夏（2004年10月号掲載）
バラの木（2001年10月号掲載）
冬のけむり（2001年12月号掲載）
2ポンドの贈り物（2004年9月号掲載）
渡月橋（2002年3月号掲載）
花守（2001年6月号掲載）
チョウさんのカーネーション（2004年9月号掲載）

映画化

小説集の中でも特に人気の高い表題作「駅までの道をおしえて」は、2019年に実写映画として製作、公開されました。橋本直樹が監督と脚色を手がけ、主人公サヤカ役には新津ちせが主演として抜擢されました。

映画製作の背景

映画の製作にあたり、主人公サヤカ役には大規模なオーディションが実施されました。2017年春から約3ヶ月間にわたり一般から募集が行われ、4次にわたる厳しい審査を経て、当時小学1年生だった新津ちせが選ばれました。彼女にとって本作が映画初主演となります。

また、物語の鍵を握るサヤカの愛犬ルーを演じる白い柴犬とは、撮影開始の約半年前から新津家で共同生活を送ることで、本物の家族のような絆を育んでから撮影に臨みました。撮影自体も、主人公である少女の成長をリアルに捉えるため、実際の時間の流れに沿って季節を追いながら、約1年半という長期間かけて行われました。

キャストとスタッフ

映画版を支えるキャストには、主演の新津ちせに加え、老人フセコウタロー役に笈田ヨシ、サヤカの母親役に坂井真紀、父親役に滝藤賢一、伯母役に羽田美智子、伯父役にマキタスポーツといった実力派俳優陣が集結しました。10年後のサヤカのモノローグは有村架純が担当しています。その他、余貴美子、柄本明、市毛良枝、塩見三省といったベテラン俳優が脇を固めています。

スタッフには、原作に伊集院静、監督・脚色に橋本直樹、音楽に原摩利彦が名を連ねます。主題歌および挿入歌はコトリンゴが担当し、繊細な音楽で物語の世界観を彩りました。

公開と反響

映画は2019年10月18日に全国70スクリーンで公開されました。観客からは、温かい物語と子役の熱演に感動したという声が多く寄せられました。国内だけでなく、中国や台湾での公開も予定されており、海を越えて多くの人々に感動を届けています。

この小説集と映画は、普遍的なテーマである「喪失と再生」、そして「世代を超えた絆」を描き、読者・観客に深い共感と感動を与え続けています。

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