髄外造血

髄外造血（ずいがいぞうけつ）とは

髄外造血とは、本来であれば骨髄で行われるはずの血液細胞の生産が、肝臓や脾臓、リンパ節など、骨髄以外の臓器で行われるようになる状態を指します。これは病的な現象であり、多くの場合、骨髄での正常な造血機能が低下したり、体が必要とする血液細胞の供給が追いつかなくなったりした場合に、それを補おうとする代償的なメカニズムとして発生します。

通常の造血と胎生期の造血

成人における血液細胞の主な製造工場は骨髄です。骨髄の中にある造血幹細胞が、赤血球、白血球、血小板といった様々な血液細胞へと分化・成熟し、全身へと送り出されます。

しかし、人間の体が形作られる胎児期においては、造血の場は変化していきます。ごく初期には、卵黄嚢と呼ばれる構造で血液が作られ始めます。その後、胎児の成長に伴って、肝臓や脾臓が主要な造血器官となります。妊娠が進み、骨格が発達してくると、徐々に骨髄が造血の中心となり、出生する頃には、ほとんど全ての血液細胞が骨髄で作られるようになります。

したがって、健康な成人では、骨髄以外の場所で血液が活発に作られることは通常ありません。（ただし、リンパ球の一部はリンパ節でも産生されます。）髄外造血は、この成人における正常な状態から逸脱した病態と言えます。

髄外造血の主な原因

髄外造血が起こる背景には、主に二つの大きな理由があります。

1. 慢性的な貧血がある場合
長期間にわたって重度の貧血が続くと、体は血液細胞を補うために骨髄での造血を最大限に活発化させます。しかし、骨髄の生産能力には限界があり、需要に追いつかなくなった場合に、過去に造血器官であった肝臓や脾臓などが再び血液を作る活動を始めます。これは、体がなんとか酸素運搬能力などを維持しようとする生体防御反応の一つと言えます。
慢性貧血を引き起こす病気としては、以下のようなものが挙げられます。
持続的な出血によるもの（例：消化管からの慢性的な失血）
赤血球が異常に破壊される溶血性貧血
ビタミンB12や葉酸の不足によって赤血球がうまく作れない悪性貧血
ヘモグロビン合成の異常による遺伝性疾患であるサラセミア
赤血球の形状が異常になる鎌状赤血球症

2. 骨髄そのものに異常があり、正常な造血ができない場合
骨髄の内部構造が変化したり、悪性の細胞が増殖したりすることで、骨髄が正常に機能しなくなり、十分な血液細胞を作り出せなくなることがあります。このような状況でも、体は血液細胞の不足を補うために、骨髄以外の場所での造血を開始することがあります。
骨髄の機能不全を引き起こす病気としては、以下のようなものが考えられます。
骨髄の細胞が無制限に増殖する骨髄増殖性腫瘍（例：骨髄線維症、真性多血症）。特に骨髄線維症では、骨髄が線維化して硬くなり、正常な造血が困難になるため、髄外造血が顕著に見られることがあります。
血液細胞の癌である白血病や悪性リンパ腫が骨髄を浸潤し、正常な造血細胞を駆逐してしまう場合。
体の他の部位から発生した癌が骨髄に転移し、骨髄の機能を障害する場合。

髄外造血が発生している場合、肝臓や脾臓が腫大することがしばしば観察されます。これは、これらの臓器で血液細胞が盛んに作られているためです。病気の原因や重症度によって、髄外造血の程度や症状は異なります。

もう一度検索