高マグネシウム血症

高マグネシウム血症：血液中のマグネシウム濃度上昇による健康リスク

高マグネシウム血症とは、血液中のマグネシウム濃度が正常値を超えて上昇する状態を指します。マグネシウムは体にとって重要なミネラルですが、過剰になると様々な臓器に悪影響を及ぼし、重症の場合には生命を脅かす危険性もあります。

高マグネシウム血症の原因

高マグネシウム血症の発症には、大きく分けて以下の3つの原因が考えられます。

1. 腎機能の低下によるマグネシウム排泄障害：腎臓は体内のマグネシウムを排泄する重要な役割を担っています。腎不全などの腎機能低下によりマグネシウムの排泄がうまくいかなくなると、血液中のマグネシウム濃度が上昇します。特に、慢性腎不全患者は高マグネシウム血症のリスクが高いです。

2. マグネシウムの過剰摂取：マグネシウムを多く含む薬剤（制酸剤、便秘薬など）や食品の過剰摂取も、高マグネシウム血症の原因となります。特に、腎機能が低下している患者は、少量のマグネシウム摂取でも血中濃度が上昇しやすいため注意が必要です。マグネシウム含有点滴剤や経口剤の投与、マグネシウムを多く含む食品（牛乳など）の過剰摂取もリスクとなります。

3. マグネシウム吸収の亢進：特定の疾患や薬剤の使用により、腸管からのマグネシウム吸収が促進される場合もあります。ビタミンDやリチウム製剤は、マグネシウム吸収を亢進させる可能性が知られています。その他、細胞の崩壊を伴う疾患（急性肝炎、白血病など）や、糖尿病性ケトアシドーシスなども、高マグネシウム血症の発症リスクを高める可能性があります。

また、甲状腺機能低下症やアジソン病などの内分泌疾患も、腎臓におけるマグネシウムの再吸収を増加させることで、高マグネシウム血症を引き起こすことがあります。

高マグネシウム血症の症状

高マグネシウム血症の症状は、血中マグネシウム濃度の程度や、患者の基礎疾患によって異なります。軽症の場合は自覚症状がほとんどない場合もありますが、重症になると以下のような症状が現れます。

神経筋症状: 倦怠感、筋力低下、深部腱反射低下、筋硬直、意識障害など
循環器症状: 徐脈、不整脈、血圧低下など。特に徐脈性不整脈は生命に関わる危険な症状です。
消化器症状: 吐き気、嘔吐など
精神症状: 無気力、嗜眠など
* その他: 排尿障害、運動失調、構音障害など

高マグネシウム血症の診断と治療

高マグネシウム血症の診断は、血液検査で血清マグネシウム濃度を測定することで行われます。一般的に、血清マグネシウム濃度が3mg/dL以上であれば高マグネシウム血症と診断されます。腎機能が正常な人で高マグネシウム血症が起こることはほとんどありません。

治療は、まずマグネシウムの摂取を制限することが重要です。腎機能が保たれている患者であれば、輸液療法により尿中へのマグネシウム排泄を促進します。しかし、腎機能が著しく低下している場合や、重症の症状（意識障害、重篤な不整脈など）を呈している場合は、カルシウム製剤の投与や人工透析が必要となる場合があります。特に、重症の徐脈性不整脈は生命に関わるため、迅速な対応が求められます。

高マグネシウム血症の予防

高マグネシウム血症の予防には、腎機能の維持とマグネシウムの過剰摂取の回避が重要です。腎機能が低下している患者は、マグネシウム含有薬剤の使用を慎重に行う必要があります。また、日頃から健康的な食生活を心がけ、定期的な健康診断を受けることで、早期発見・早期治療につなげることが重要です。

まとめ

高マグネシウム血症は、放置すると重篤な合併症を引き起こす可能性のある疾患です。特に腎機能の低下している患者は、注意が必要です。症状が現れたら、速やかに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。

もう一度検索