高似孫

高似孫（こう じそん）

高似孫は、生没年不詳の南宋時代の文人です。字は続古といい、多くの著作を著したことで知られています。特に、『史略』、『子略』、『緯略』などの目録学に関する著作は、後世の研究者から高く評価されています。しかし、同時代からは批判も受けており、その人物像は毀誉褒貶が激しいものとなっています。

生涯

高似孫は明州鄞県（現在の浙江省寧波市海曙区）の出身です。父の高文虎は翰林学士であり、『天官書集註』という著書がありました。高似孫は早熟で、父が程大昌から借りた『演繁露』を読んで、独自の解釈を加えた『繁露詁』を著したと言われています。この書物には、程大昌の著書にはない内容も多く含まれていたそうです。

陳振孫によれば、高似孫は淳熙11年（1184年）に進士に合格しましたが、韓侂冑に媚びる詩を作ったため、清廉な人物からは軽蔑されたとされています。その後、宝慶元年（1225年）には処州（現在の浙江省麗水市付近）の知州を務めましたが、その際には非常に貪欲な官吏であったという評判が残っています。官職は礼部郎でした。

著作

高似孫は、多岐にわたる分野で著作を残しました。以下に主なものを紹介します。

『経略』：現存せず。経書の目録であったと考えられています。
『史略』 6巻（1225年序）：史書の目録。中国では早くに失われましたが、日本に残り伝えられました。
『子略』 4巻：諸子百家の書物の目録。
『集略』：現存せず。集部の書物の目録であったと推測されています。
『緯略』 12巻：『経略』、『史略』、『子略』、『集略』、『騒略』から漏れた事柄をまとめたもの。
『騒略』 3巻：楚辞に倣って書かれた文学作品。
『詩略』：現存せず。
『蟹略』 4巻：北宋の傅肱『蟹譜』を基に、蟹に関する知識をまとめたもの。
『硯箋』 1巻（1223年序）：硯に関する書物。
『剡録』 10巻：嵊県（現在の紹興市嵊州市）の地誌。
『疎寮集』 3巻：現存せず。ただし、『四庫全書』には高翥『信天巣遺稿』の附録として『疏寮小集』1巻が収録されています。
『煙雨集』：現存せず。
『選詩句図』 1巻（1222年序）：詩の句を抜粋したもの。
『文苑英華鈔』 4集：『文苑英華』から文章作成に役立つ句を抜粋したもの。
『唐科名記』 1巻：唐代の科挙の合格者一覧。『重較説郛』に収録されています。
『唐楽曲譜』 1巻：唐代の音楽の曲名一覧。『重較説郛』に収録されています。
* 『蘭亭考』 12巻：宋の桑世昌の著書を、高似孫が編集したとされています。

評価

同時代の陳振孫は、高似孫の著作『疎寮集』の解題において、彼を批判的に評価しています。陳振孫は、高似孫が博学をひけらかすために難解な文章を書いていると指摘し、文章には欠点が多いとしながらも、詩には見るべき点もあると述べています。

一方、元の時代の馬端臨は、『文献通考』経籍考で『子略』をしばしば引用しており、その学識を認めていました。また、内藤湖南は高似孫の目録学を高く評価し、既存の知識を整理・体系化することで独自の学問を築いたと評価しました。内藤湖南によれば、高似孫は当時の人々からは批判されましたが、その業績は目録学において画期的なものであったとされています。

高似孫の著作は、同時代の人々からは必ずしも高く評価されませんでしたが、後世の研究者からはその学術的な価値が認められています。特に目録学の分野においては、その貢献は非常に大きいとされています。

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