高千穂宣麿

高千穂宣麿：神職、昆虫学者、そして政治家

高千穂宣麿（たかちほ のぶまろ、1865年 - 1950年）は、明治から昭和初期にかけて活躍した、稀代のマルチな才能を持つ人物でした。神職として英彦山神社宮司を務め、昆虫学者として日本における昆虫学の発展に貢献、さらに政治家として貴族院議員の地位にも就いています。その生涯は、学問への探究心、自然への深い愛情、そして華麗なる家系に彩られた、波乱に満ちたものでした。

華麗なる出自と幼少期

高千穂宣麿は、公家の家系である徳大寺家の出身です。父は中納言の徳大寺実則、母は山内豊資の六女・嘉年子でした。1865年、京都で生まれた宣麿は、1870年に一家で東京に移住します。父・実則は明治天皇の侍従となり、侯爵に叙爵されるなど、華やかな環境で育ちました。

幼少期から動植物への強い関心を示し、東京大学小石川植物園や開拓使博物館に通い、観察に没頭しました。11歳頃から博物学への興味を深め、学習院や共立学校（現：開成中学校・高等学校）で学び、大学進学を目指していました。

英彦山神社宮司、そして昆虫学者へ

しかし、1883年、宣麿の人生は大きな転機を迎えます。高千穂家の養子となり、英彦山神社の宮司を継いだのです。学業を中断し、九州の英彦山へと向かった宣麿は、そこで豊かな自然に囲まれた生活を始めます。

英彦山の大自然の中で、宣麿は生物の採集と観察に熱中しました。1888年には、日本人として初めてタカチホヘビを採集するという偉業を成し遂げます。昆虫研究への情熱は衰えることなく、1900年には英彦山神宮の社務所近くに高千穂昆虫学実験所を設立。その後、コーネル大学留学経験を持つ桑名伊之吉を迎え、九州昆虫学研究所へと発展させました。

貴族院議員としての活動

宣麿の活動は、学問の世界にとどまりませんでした。1907年には貴族院男爵議員に選ばれ、東京に移住。政治の世界に足を踏み入れます。貴族院議員としての活動のかたわら、農商務省農事試験場にて害虫の飼育研究を行い、昆虫学者としての研究も継続しました。東京帝室博物館（東京国立博物館）でも昆虫標本の整理に携わっています。1925年に貴族院議員を退任後は、再び英彦山に戻り、研究活動を続けました。

九州帝国大学への貢献と晩年

晩年には、長年尽力した九州昆虫学研究所のすべてを九州帝国大学に寄付。研究所は九州帝国大学彦山生物学研究所と改称され、宣麿自身も嘱託として勤務しました。1950年、85歳で生涯を閉じました。

高千穂宣麿が残したもの

高千穂宣麿は、神職、昆虫学者、政治家という複数の顔を持つ、稀有な人物でした。それぞれの分野で顕著な業績を残し、日本の文化発展に貢献しました。その生涯は、学問への飽くなき探究心、自然への深い愛情、そして時代の変化の中で揺るぎない信念を貫き通した、一つの生き様を示すものです。彼の功績は、現在もなお、人々に記憶され、評価されています。

家族

宣麿の家族もまた、名家や名家に繋がる華麗な家系でありました。父、母、養父、妻、そして子供たちはそれぞれ著名な家系に属していました。彼の家系図は、日本の歴史の一端を垣間見れる興味深いものと言えるでしょう。

参考文献

筒井住蓮『大日本華族大鑑』
人事興信所『人事興信録』
『貴族院要覧』
衆議院、参議院『議会制度百年史』
* 霞会館『平成新修旧[[華族家系大成]]』

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