高宮郡

高宮郡（たかみやぐん）

高宮郡は、かつて安芸国（現在の広島県西部）に存在した歴史的な郡です。その歴史において、時代によって領域が大きく異なるという特徴を持ちます。

古代の高宮郡

古代に存在した高宮郡は、現在の安芸高田市の南部に位置する地域、具体的には八千代町、吉田町、美土里町、そして高宮町来女木にかけての広がりを持っていたとされています。この古代の高宮郡は、中世に至るまでに隣接する高田郡に徐々に吸収され、独立した郡としての形は消滅しました。

興味深いことに、現在安芸高田市の一部となっている「高宮町」（平成16年合併により消滅）は、この古代の高宮郡の名称を継承していますが、その町域は近代以降に存在した高宮郡の領域とは全く一致していません。旧高宮町は、古代からの地名に由来するものです。

近代の高宮郡

平安時代に安芸郡が南北に分かれてできた「安北郡」が、江戸時代の寛文4年（1664年）に名称を改め、再び「高宮郡」として成立しました。これが近代の高宮郡の始まりです。

行政区画として正式に発足した1878年（明治11年）時点でのこの近代高宮郡の領域は、現在の広島市域の広範囲に及んでいました。具体的には、東区の一部（馬木町、馬木、福田町、福田）、安佐北区の大部分（太田川以南の地域や白木町各町、安佐町大字小河内を除く）、そして安佐南区の一部（東野、中筋、古市）が含まれていました。

この近代の高宮郡は、1898年（明治31年）10月1日に、かつて佐東郡と呼ばれていた沼田郡と統合され、「安佐郡」へと移行しました。安佐郡として再編された地域は、その後広島市に編入され、現在ではその全域が広島市の一部となっています。

近世以降の主な沿革

明治維新の頃、高宮郡の全域は安芸広島藩の領地でした。

明治初年時点では、「旧高旧領取調帳」によれば36の村が存在していました。
明治4年（1871年）7月14日、廃藩置県により広島県の管轄となります。
明治11年（1878年）11月1日、郡区町村編制法が広島県で施行され、行政区画としての高宮郡が正式に発足しました。沼田郡南下安村には「沼田高宮郡役所」が設けられ、沼田郡と合同で郡の行政を担いました。
明治15年（1882年）には村の再編が進み、いくつかの村が合併・編入されました。水落村と九品寺村が合わさって城村となり、上四日市村と下四日市村が四日市村に、下中野村と上中野村が中野村となりました。また、関屋村は鈴張村に編入されています。これにより村数は32となりました。
明治22年（1889年）4月1日、町村制が施行され、郡内の村々が統合・再編されて1町11村が誕生しました。これらの町村はすべて現在の広島市域に含まれています。
可部町
三川村（旧中筋古市村、東野村）
鈴張村（旧鈴張村、関屋村）
飯室村
亀山村（旧勝木村、大毛寺村、四日市村、今井田村、綾ヶ谷村）
大林村
三入村（旧南原村、下町屋村、上町屋村、桐原村）
中原村（旧中島村、上原村、中野村、城村）
深川村（旧中深川村、下深川村、諸木村、末光村、岩上村、玖村）
狩小川村（旧狩留家村、上深川村、小河原村）
福木村（旧馬木村、福田村）
口田村（旧小田村、矢口村）
明治28年（1895年）9月1日、深川村の一部（諸木、末光、岩上、玖の各地区）が分かれて独立し、落合村が発足しました。これにより、郡内の町村は1町12村となりました。
* 明治31年（1898年）10月1日、郡制の施行に伴い、沼田高宮郡役所の管轄区域が統合され安佐郡が発足したため、高宮郡は廃止されその歴史を終えました。

このように、高宮郡は古代においては現在の安芸高田市の一部を、近代においては現在の広島市の一部を領域とするなど、時代の変遷とともにその存在形態を変えてきた歴史的な郡と言えます。

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