高家 (江戸時代)

高家（こうけ）

高家は、江戸幕府において儀式や典礼を管理する役職であり、この職に就くことが許された家格の旗本を指します。高家職はまた「高家」という名称で知られ、役職に就く旗本は大きく分けて奥高家と表高家に分類されます。奥高家は高家職に就く旗本であり、表高家はそうでない旗本を指します。

創設の背景

江戸幕府の典礼制度は、開幕初期に徐々に整備されました。慶長8年（1603年）、徳川家康が征夷大将軍に就任した際、大沢基宿がその式典の作法を管掌したことが高家の役職の起源とされています。当初は、高家職という名称はありませんでしたが、慶長13年（1608年）に吉良義弥が従五位下侍従に叙任された時に、大沢基宿と共に典礼に関与しました。これにより、以降高家職の就任時に従五位下侍従に叙せられる習慣が生まれ、この日を高家制度の始まりとみることもあります。

さらに、元和2年（1616年）には一色範勝が徳川家康のもとで幕府の饗応役に任命され、次第に高家の名称や慣行が確立していきました。特に高家の特筆すべき功績として、吉良義弥の義兄弟である今川直房が「東照宮」の宮号を交渉の末に朝廷から取得した事例があります。

高家職の制度と働き

高家職は幕府の組織制度において老中の支配下にあり、主な職務としては将軍の代理としての賠償や朝廷への使者、逆に朝廷からの使者の接待を行っていました。将軍が伊勢神宮や日光東照宮、その他重要な宮社に代参する際、高家職に就く者が代理を務めました。また、高家職は朝廷との儀礼に関わるあらゆる礼儀の指導にあたることも求められていました。

高家職に就くことができたのは、「高家」の家格を持つ旗本のみであり、奥高家に所属する者は高家職を担っていました。高家職に就く人数は時代によって変わり、延宝年間には9人、安政5年（1858年）には17人に増加していました。さらに特に有職故実や礼儀作法に精通した3名が選ばれ、高家肝煎と呼ばれる役職を持っていました。

高家の家格

高家職に就くことのできる旗本は、主に著名な武士や公家の家柄で構成されていました。自らの家格の高さを示すために、著名な家系を保持することを目的とした制度でした。初代の大沢基宿は、公家の流れを汲む人物であり、根源には名門の家柄が多く存在しました。

高家の地位は、朝廷への使者として天皇に拝謁する機会が与えられることから、他の武士階級よりも高いものでした。奥高家は、従五位下侍従から従四位下の官位を持つ事例が多く、特に高家肝煎に就任する者はさらに高位の従四位上といった官位に昇進することもありました。

明治以降の高家

明治維新以降、高家は朝臣としての地位を持つことになり、一般の旗本と同様に士族として扱われました。高家の一部は一時的に華族となることができましたが、石高虚偽によって華族から士族に降格された例もあります。明治の華族制度において、高家の人々は男爵候補として挙げられることもありましたが、最終的に授爵の対象にはならず、士族の位置に留まりました。

高家一覧

高家には、有馬家、一色家、今川家など多くの家系が存在し、個々に異なる石高を持ちながら特有の歴史を刻んできました。特に吉良家は赤穂事件で有名であり、その影響は現在においても語り継がれています。

高家制度の存在は、江戸幕府の政治と文化の側面に影響を与え、幕末の動乱期にも重要な役割を果たしました。高家に関する研究は、幕府の儀礼や制度の理解を深める上で重要なものとなっています。

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