今川直房

今川直房

今川直房（いまがわ なおふさ）は、江戸時代前期に活躍した旗本であり、高家今川家の初代当主として知られています。彼は今川範以の子として生まれ、その生涯を通して江戸幕府に仕え、今川家の地位向上と文化的な発展に大きく貢献しました。

生涯

高家就任までの道のり

文禄3年（1594年）に京都で生まれた直房は、慶長12年（1607年）に父を亡くし、祖父である今川氏真の元で養育されました。慶長16年（1611年）には徳川秀忠に初めて拝謁し、慶長18年（1613年）には徳川家康に同行して江戸城に出仕するなど、早くから幕府との関わりを深めていきました。氏真の死後、家禄500石を継ぎ、寛永10年（1633年）には知恩院門跡良純法親王の接待役を務めるなど、高家としての職務を徐々に担うようになっていきました。

高家としての活躍

寛永11年（1634年）には徳川家光の上洛の先発として京都に赴き、寛永13年（1636年）には日光東照社参詣の際に衣紋の役を勤めるなど、幕府の重要な行事に関わりました。同年には従五位下・侍従に叙任され、将軍出御時の衣紋役や太刀役、公卿や門跡の接待役、京都御所への使節、伊勢神宮・日光東照社への代参使など、高家としての職務を幅広くこなしました。

東照大権現宮宣下への貢献

元和2年（1616年）の徳川家康の死後、朝廷は家康に東照大権現の神号を宣下しましたが、家光は宮号宣下を求めました。正保2年（1645年）、直房は大老・酒井忠勝と共に使者として菊亭経季と交渉し、ついに宮号宣下を実現させました。この功績により、直房は家光から武蔵国井草村など3か村500石を加増され、家禄は1,000石となりました。

その後

4代将軍徳川家綱の代にも重用され、承応2年（1653年）には左近衛少将に任ぜられました。万治4年（1661年）には御所炎上の見舞いとして上洛したのが最後の京都御使となり、同年11月24日に68歳で死去しました。葬地は市谷の長延寺です。

高家今川家の祖として

直房は、今川氏歴代の中で唯一左近衛少将に昇った人物であり、今川氏中興の祖として子孫から崇敬されました。彼は祖父氏真と母利正院の墓を知行地の井草村に移し、観泉寺を今川家代々の菩提寺としました。また、氏真の弟である一月長得が修行した長延寺を開基し、高家今川家代々の当主は長延寺に葬られています。

系譜

『寛政重修諸家譜』によると、直房には3男2女がいましたが、嫡男範明と二男範興が早世したため、妹の孫である今川氏堯が家督を継ぎました。

父：今川範以
母：利正院（吉良義安の娘）
* 正室：立花宗茂養女（矢島重成の長女・菜緒）

直房の生涯は、高家今川家の基礎を築き、幕府との関係を強化し、文化的な貢献を果たしたことで、後世に大きな影響を与えました。

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