高富藩

高富藩の歴史

高富藩（たかとみはん）は、美濃国、現在の岐阜県山県市に位置し、かつて存在した藩です。その藩庁は高富陣屋に置かれていました。

藩の始まりは、宝永2年（1705年）に第5代将軍・徳川綱吉の生母である桂昌院の異母兄、本庄道芳の孫である本庄道章が1万石の大名として高富に入ったことに遡ります。正式に高富に陣屋が移転したのは、宝永6年（1709年）であり、これは本庄家と徳川家との関係が背景にあります。

本庄家は江戸に本拠を構える大名家で、出自や立地から京都の公家衆と深い関わりを有しており、そのため小藩にしては多額の出費が伴うことが多かったのです。こうした事情から、第8代藩主・本庄道昌の時代に財政的な困難が始まりました。

第9代藩主・本庄道貫は藩政改革を試み、厳しい倹約令を布告し、農民には植林を奨励しましたが、献納金の徴収策は失敗に終わります。その後、年貢増徴策や藩札の発行を計画しましたが、住民たちの強い反対によって頓挫してしまいました。道貫は安政5年（1858年）にも再び改革を試みましたが、同年の8月26日に他界したため、これもまた失敗に終わります。

その次の第10代藩主・本庄道美の時代には藩の財政が完全に破綻し、慶応4年（1868年）には打ちこわしや百姓一揆が発生しました。この時点で、高富藩はおよそ20万7400両の借金を抱えていました。藩内の庄屋や豪農たちも多くの借財を抱えており、その多くは後の版籍奉還の際に未解決のままとなりました。

さらに、これらの経済的困難に加え、藩の領地が美濃に集中し、関東にも分領が存在しているため、財政の引き締めが難しくなっていたことも、藩の経済的な窮迫を招く要因であったとされています。

明治2年（1869年）の版籍奉還により本庄道美は藩知事に任命され、明治4年（1871年）の廃藩置県によって高富藩は廃藩され、高富県となりました。最終的に明治5年（1872年）には高富県は岐阜県に統合されることとなりました。

高富藩の歴代藩主10名のうち、6名は幼少であったり、病弱で嗣子がないため、度々縁戚や他姓から末期養子が迎えられるなど、家庭の事情に恵まていないことが見受けられました。

歴代藩主

高富藩の藩主は本庄家から選ばれ、その中での主なメンバーは次の通りです。

• - 道章（主君名: 本庄道章） - 従五位下 宮内少輔
• - 道矩（みちのり） - 従五位下 大和守
• - 道倫（みちとも） - 従五位下 和泉守
• - 道堅（みちかた） - 従五位下 大和守
• - 道信（みちのぶ） - 従五位下 大和守
• - 道揚（みちあき） - 従五位下 山城守
• - 道利（みちとし） - 従五位下 甲斐守
• - 道昌（みちまさ） - 従五位下 式部少輔
• - 道貫（みちつら） - 従五位下 伊勢守
• - 道美（みちよし） - 従五位下 宮内少輔

幕末の領地

高富藩の領地は、美濃国の各務郡や方県郡の一部、山県郡の一部、さらに下野国の梁田郡も含まれていました。明治維新後には、山県郡に追加の村が加わりましたが、同時に相給の制約もあり、実際に村数の増加は3村にとどまりました。

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