高島藩主諏訪家墓所

高島藩主諏訪家墓所：歴史と文化を刻む墓域

長野県諏訪市と茅野市にまたがる高島藩主諏訪家墓所は、江戸時代、高島藩を治めた諏訪家の歴代藩主の墓所です。2017年（平成25年）2月9日、国の史跡に指定されたこの墓所は、単なる墓地ではなく、諏訪氏の歴史と文化を深く理解するための貴重な史跡です。

諏訪氏の興亡と高島藩の成立

諏訪氏は、古くから諏訪神社上社の大祝（神職の最高位）を務めた家系です。鎌倉時代には北条氏の被官となり、室町時代には信濃の国人領主として勢力を保ちました。しかし、天文11年（1542年）、武田信玄の侵攻により、当主・頼重は自害に追い込まれ、諏訪は武田氏の支配下に入ります。

武田氏が織田信長によって滅ぼされた後、頼重の従弟である頼忠が諏訪氏の家督を継ぎ、徳川家康の支援を得て旧領を取り戻しました。天正11年（1583年）、家康は諏訪家に旧領を安堵しました。その後、豊臣秀吉の小田原征伐に伴い、頼忠は関東に移封されましたが、関ヶ原の戦い後、慶長6年（1601年）、子の頼水は諏訪に戻り、高島藩初代藩主となりました。こうして、諏訪家は幕末まで高島藩を統治することになります。

頼岳寺墓所：初代藩主と先祖を祀る

高島藩主諏訪家の墓所は、茅野市の頼岳寺と諏訪市の上諏訪温泉寺に存在します。頼岳寺には、初代藩主頼水とその両親である頼忠と理昌院の墓所があります。頼忠は慶長10年（1605年）に死去、当初は諏訪家の菩提寺であった永明寺に葬られましたが、永明寺の破却後、寛永8年（1631年）、頼水によって建立された頼岳寺に改葬されました。

頼岳寺墓所は、初代藩主頼水とその両親の墓塔を祀る御霊屋を中心に構成されています。御霊屋は木造平屋建て、入母屋造、瓦葺きの建物で、内部には3つの空間があり、それぞれ頼水、頼忠、理昌院の墓塔が安置されています。また、頼水の石廟は、安山岩製の精巧な造りで、内部には五輪塔形の石碑が安置されています。墓所内には、宝篋印塔や五輪塔、石燈籠なども配置され、当時の葬祭文化を偲ばせる貴重な遺構です。

温泉寺墓所：歴代藩主の眠る地

温泉寺墓所は、高島城から北東1.3キロに位置し、2代藩主頼恒が慶安2年（1649年）に建立した菩提寺です。2代から8代までの藩主とその妻子の墓塔が、上段、中段、下段の3段に造成された墓地に、独特の形状の舟形墓標とともに安置されています。墓塔は横一列に並び、各墓塔前には石敷の参道が整備され、墓所全体は整然とした構成となっています。116基もの石燈籠が奉納されており、藩主家の威厳と、人々の崇敬の念が感じられます。2代藩主の墓塔は、かつては木造の霊屋内に安置されており、金泥が残っている部分も確認できます。

高島藩主諏訪家墓所の歴史的意義

高島藩主諏訪家墓所は、単なる墓所にとどまらず、諏訪氏の歴史、高島藩の繁栄、そして当時の葬祭文化を伝える貴重な史跡です。それぞれの墓塔や付属施設、建築様式、そして配置から、当時の社会情勢や信仰、文化までもを読み解くことができます。国の史跡としての指定は、その歴史的価値と文化的意義を改めて証明するものです。今後も、保存と活用を通じて、この貴重な歴史遺産を後世に伝えていくことが重要です。

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