高崎山自然動物園

高崎山自然動物園：野生のニホンザルと共にある自然公園

大分県大分市、高崎山に位置する高崎山自然動物園は、大分市が運営する自然公園です。この動物園の最大の魅力は、野生のニホンザルを間近で観察できる点にあります。山麓に設けられたサル寄せ場では、飼育員による餌付けが行われ、観光客は檻越しではなく、野生のニホンザルの群れを安全に観察できます。

サルたちの群れと社会構造

高崎山のニホンザルは、主にB群とC群の2つの大きな群れに分かれています。それぞれの群れにはリーダー的存在であるαオス（ボスザル）がおり、群れの行動を統率しています。かつてはA群も存在し、1000頭を超える規模を誇っていましたが、C群との勢力争いに敗れ、2002年頃には姿を消してしまいました。2020年11月の調査では、B群が677頭、C群が362頭、合計で1039頭のニホンザルが生息しています。

高崎山とサル学の歴史

高崎山には、少なくとも戦国時代からニホンザルが生息していたと考えられています。古文書には、高崎山のサルに関する記述や、サルにまつわる興味深い伝説が数多く残されています。明治時代には600頭に達するほどでしたが、山火事などで一度減少。終戦直後には農作物への被害が増え、駆除が試みられましたが失敗に終わりました。そこで、当時の大分市長、上田保氏の提案により、駆除の代わりに餌付けを行い、観光資源として活用することが決定。これが高崎山自然動物園の始まりとなりました。

1952年、餌付けが開始され、翌年には正式に開園。大人と子どもの料金が同じという斬新な料金設定も話題を呼びました。同年、高崎山は阿蘇国立公園（現阿蘇くじゅう国立公園）に指定され、「高崎山のサル生息地」は国の天然記念物に指定されました。開園後には、火野葦平の小説『ただいま零匹』が朝日新聞夕刊で連載され、映画化もされ、高崎山の知名度向上に大きく貢献しました。

アクセスと施設

高崎山自然動物園は、東九州自動車道大分IC、別府ICから約25分。大分交通バスも利用できます。開園時間は9:00～17:00（入園は16:30まで）、年中無休です。入場料金は大人・高校生520円、中・小学生260円、幼稚園児以下は無料です。毎年11月の第3土曜日は無料開放日となっています。

園内には、サル寄せ場の他に、「高崎山おさる館」や、サル寄せ場へのアクセスを便利にする小型モノレール「さるっこレール」などの施設があります。「高崎山おさる館」では、高崎山のニホンザルに関する資料や、初代ボスザル「ジュピター」の骨格標本などが展示されています。

個体群の変遷とボスザルの系譜

高崎山のサルは、かつてA群、B群、C群の3つの群れがありましたが、現在はB群とC群の2群となっています。それぞれの群れではボスザルがリーダーとして君臨し、その交代劇は群れの勢力図を大きく変えてきました。歴代のボスザルには、個性豊かなサルたちが数多く名を連ね、それぞれのサルが群れの繁栄に貢献してきました。近年はB群とC群の勢力争いが激しく、群れの構成やサル寄せ場への出現状況にも影響を与えています。

高崎山自然動物園の魅力

高崎山自然動物園は、単なる動物園ではなく、野生のニホンザルを間近に観察できる貴重な場所です。サルたちの生態や社会構造を学び、自然との共存について考えることができる、教育的価値の高い観光スポットと言えるでしょう。また、園内の美しい自然も魅力のひとつであり、サル観察だけでなく、森林浴や散策を楽しむこともできます。

高崎山自然動物園は、日本のサル学発祥の地としても知られています。これからも、ニホンザルの保護と研究、そして観光客への魅力的な情報提供を通じて、地域社会に貢献していくことが期待されます。

もう一度検索