高木惣吉

高木惣吉：激動の時代を駆け抜けた異色の海軍軍人

高木惣吉（1893年8月9日 - 1979年7月27日）は、日本の海軍軍人であり、最終階級は海軍少将です。海軍兵学校を卒業後、海軍大学校を首席で卒業するなど、その秀才ぶりを発揮しました。

貧困を乗り越え海軍へ

高木は熊本県人吉市の貧しい家庭に生まれました。旧制中学校への進学を諦めざるを得ない状況でしたが、働きながら独学で学び、海軍兵学校への入学を果たしました。海軍兵学校では、100名中21番という優秀な成績で入校し、卒業時も96名中27番と上位の成績を修めました。しかし、入校当初から健康に恵まれず、洋上勤務を希望していたにもかかわらず、持病の悪化により陸上勤務が多くなりました。高木自身も、この事が同期生における序列に影響したと回想しています。

軍政分野での活躍

海軍大学校を首席で卒業後、高木は主に陸上勤務に従事し、海軍省勤務時代には、軍部外に幅広い人脈を構築しました。この人脈は、後の活動において重要な役割を果たすことになります。特に、海軍省官房調査課長時代には、南方占領地の統治に携わるなど、軍政分野でその手腕を発揮しました。

東條英機暗殺計画と終戦工作

太平洋戦争末期、戦局が悪化する中、高木は早期終戦を模索し、東條英機首相の暗殺計画を立案しました。この計画には、海軍の中堅幹部や高松宮宣仁親王、細川護貞なども加わりました。しかし、計画実行直前に東條内閣が総辞職したため、未遂に終わりました。
その後、米内光政海軍大臣と井上成美海軍次官から終戦工作の密命を受け、各方面と連携を取りながら、終戦への道筋をつけました。高木は、本土決戦を主張する陸軍中堅将校の妨害を排除しつつ、終戦への基盤づくりに貢献したとされています。

戦後の活動

終戦後、高木は東久邇宮内閣の内閣副書記官長に就任し、各省次官を統括する役割を担いました。その後、公職追放を経て、軍事評論家として活動し、海上自衛隊幹部学校で戦史戦略の特別講師を務めました。

ブレーントラストの構築

高木は、海軍省官房調査課長時代に、各方面の専門家を集めたブレーントラストを組織しました。これは、日本の戦争理念の研究、生産増強策の提案、海軍政治力の補強を目的としたもので、多くの有識者が参加しました。思想、外交、政治、経済など、様々な分野の専門家が集められ、高木の幅広い人脈と情報収集能力が窺えます。

人物像

高木は、幼少期から貧困と容姿に関するコンプレックスに苦しみましたが、その経験から権威や上司に媚びない、反骨精神の強い人物として知られています。また、海軍部内だけでなく、政界、財界、学界など幅広い人脈を有しており、その情報収集能力は非常に高く評価されています。

高木惣吉の遺した功績

高木惣吉は、その卓越した知性と行動力で、激動の昭和史を駆け抜けた異色の軍人でした。海軍内部での独自の立場から、太平洋戦争の早期終結に向けて尽力し、日本の終戦に大きく貢献しました。また、その記録は、現在も重要な歴史資料として、国立国会図書館などに保管されています。

高木惣吉記念館

高木の故郷である熊本県人吉市には、遺族によって「高木惣吉記念館」が運営されており、その功績を今に伝えています。

主な著書

『終戦覚書』
『太平洋海戦史』
『聯合艦隊始末記』
『山本五十六と米内光政』
『自伝的日本海軍始末記』
『高木惣吉日記 日独伊三国同盟と東条内閣打倒』

高木惣吉は、その生涯を通じて、日本の進むべき道を示唆し続けました。その功績は、現代においても深く記憶されるべきでしょう。

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