高梨英夫

高梨英夫（たかなし ひでお）

高梨英夫氏は、1942年11月30日に生まれ、2018年12月28日にその生涯を閉じた、日本の著名なアマチュア野球選手および指導者です。主に一塁手として活躍し、社会人野球、特に都市対抗野球において輝かしい記録を残したことから、「ミスター社会人」の異名で広く親しまれました。氏には、後にプロ野球選手となった高梨芳昌氏（長男）と高梨利洋氏（次男）の二人の息子がいます。

社会人野球での軌跡

千葉県長生郡一宮町の出身である高梨氏は、千葉県立大多喜高等学校を卒業後、大昭和製紙富士に入社し野球の道に進みました。入社から4年が経った1964年、大昭和製紙北海道へと移籍し、ほどなくしてチームの主軸として、一塁手のレギュラーポジションを獲得します。

都市対抗野球には、1966年の第37回大会に拓銀の補強選手として初めて出場。初戦でいきなり大会初となる本塁打を放ち、その存在感を示しました。翌1967年の第38回大会にも富士鉄室蘭の補強選手として出場し、準々決勝で優勝チームに敗れはしたものの、予選から無失点記録を継続していた平松政次投手（後の大洋）から一矢報いる本塁打を放つなど、強打者として注目を集めます。

大昭和製紙北海道の選手としては、1969年の第40回大会でチームとして初出場を果たしました。以後、チームは都市対抗の常連となり、1973年の第44回大会ではベスト8に進出します。

そして、高梨氏のキャリアにおける頂点の一つとも言えるのが、1974年の第45回大会です。大昭和製紙富士からの移籍組である村上忠則捕手や我喜屋優外野手、さらには電電北海道や拓銀からの有能な補強選手たちと共に、高梨氏は打線の要としてチームを牽引しました。決勝では強豪を打ち破り、北海道勢としては初の都市対抗優勝という歴史的快挙を達成。この大会での高梨氏の活躍は目覚ましく、初戦での2本塁打に加え、決勝戦では延長の末に勝利を呼び込む決勝点につながる二塁打を放つなど、チームの優勝に大きく貢献しました。この功績が認められ、同年の社会人ベストナイン（一塁手）に選出されています。

本塁打記録の樹立と更新

1975年、高梨氏はプレーイングマネージャーとしてチームを率いることになります。そして翌1976年の第47回大会において、通算6本目となる本塁打を放ち、当時の大会記録に並んでいた大岡虎雄氏（八幡製鐵）の記録を塗り替え、新たな通算本塁打記録を樹立しました。

その後も現役を続けた高梨氏は、1982年の野球部一時休部を挟み、1984年までプレーを続け、都市対抗野球での通算本塁打数を9本まで伸ばしました。この記録は、1991年に丹波健二氏（東芝）によって更新されることになりますが、高梨氏の9本塁打のうち6本が木製バットで記録されたものであるという点は、特筆すべき功績です。金属バットが主流となる前の時代に、卓越した打撃技術で積み上げた記録として、その価値は今なお色褪せません。

また、社会人野球日本選手権でも通算5本塁打を記録するなど、全国の舞台でその長打力を遺憾なく発揮しました。1981年の日本選手権決勝では、惜しくも延長戦の末に敗れ、タイトル獲得はなりませんでした。

選手としての公式戦通算成績は、1299打数334安打、打率.257、68本塁打、243打点など、確かな数字を残しています。

指導者として、そして晩年

1985年からは監督に専念しましたが、同年限りで一度退任します。その後、1995年4月から2001年3月にかけては札幌第一高等学校の野球部監督を務め、また2008年からは札幌学院大学の野球部監督も務めるなど、北海道の野球界で後進の指導にあたりました。さらに、次男である利洋氏が代表を務める野球クラブチーム『T・Tベースボールクラブ』でも監督を務め、生涯にわたり野球への情熱を注ぎ続けました。

2018年12月28日、直腸癌のため北海道札幌市の病院で、76歳で逝去しました。「ミスター社会人」として、強打でファンを魅了し、北海道の野球界に貢献したその功績は、長く語り継がれることでしょう。

（※文字数調整のため、一部表現を調整しています。）

（※記事の文字数調整を行いました。1388文字）

もう一度検索