高畠華宵

高畠華宵：大正ロマンを彩った画家とその生涯

高畠華宵（たかばたけ かしょう、1888年-1966年）は、大正から昭和初期にかけて活躍した日本の画家です。愛媛県宇和島市出身で、本名は高畠幸吉。京都市立美術工芸学校日本画科で学んだ華宵は、独特の画風で当時の人々を魅了し、絶大な人気を博しました。

華麗なるデビューと人気絶頂

華宵は京都市立美術工芸学校を中退後、関西美術院で学び、上京して寺崎広業に師事しました。生活に苦しむ日々を送る中、1911年、「華宵」名義で発表した津村順天堂「中将湯」の広告画で注目を集めます。アール・ヌーボーやユーゲントシュティール、オーブリー・ビアズリーの影響を受けたシャープなペン画は、それまでの広告イラストとは全く異なるものでした。

その後、『少女画報』『少女倶楽部』『少年倶楽部』『日本少年』『婦人世界』といった雑誌に、独特の美少年・美少女を描いた挿絵や美人画を発表。その作品はたちまち人気となり、竹久夢二と並ぶ人気画家となりました。華宵は雑誌の挿絵だけでなく、便箋や封筒のデザイン、さらには洋服のデザインまで手掛け、メディアミックス的な展開で人気をさらに拡大しました。1928年の流行歌「銀座行進曲」の歌詞には、「華宵好みの君も往く」と歌われるほど、華宵の名前は広く知れ渡りました。

鎌倉の稲村ヶ崎に建てた豪邸「華宵御殿」は、華宵の個性あふれる趣味が凝縮された空間として話題となり、全国からファンレターが殺到しました。地方の令嬢が華宵に会うために家出するほどの人気ぶりでした。華宵の画料は本人の言い値で決まっていたといわれ、他の画家からの画料引き下げ要求にも、寄稿を取りやめることで対応するほど、その人気は揺るぎないものでした。

戦時下と戦後の苦悩

しかし、戦時色が強まるにつれて、華宵の活動は徐々に減っていき、大衆の人気が薄れていきました。戦後も華々しい復活とはならず、経済的な困窮や健康問題にも苦しみました。かつての栄光とはかけ離れた生活を送る中で、実兄を頼るほどにまで落ちぶれていきます。

再評価と晩年

そんな華宵に転機が訪れます。幼少期に華宵のファンだった弁護士の鹿野琢見氏が、華宵の困窮を知り、文通を始めました。鹿野氏の尽力や、かつて華宵の絵に熱狂した世代の支援もあり、首都圏で華宵の回顧展が開催され、再び人気が再燃しました。華宵は1966年、鹿野氏と、かつて画料問題で対立した加藤謙一氏に見守られながら生涯を閉じました。挿絵画家として初めて勲五等双光旭日章を受章しました。

画風

華宵の絵は、人物画が中心です。独特の三白眼と中性的な雰囲気を持つ人物像は、妖艶さと清楚さを併せ持ち、一目で華宵の作品だとわかる個性を持っています。和装や洋装など、多様な衣装や髪型、アクセサリーが描かれ、そのファッションセンスは時代の最先端をいくものでした。代表作である「移り行く姿」は、明治から昭和初期の女性ファッションの移り変わりを、60人以上の女性を配した六曲一双の屏風絵に描いた大作です。

展示施設

現在、華宵の作品は、東京都文京区の弥生美術館、愛媛県東温市の高畠華宵大正ロマン館、宇和島市立歴史資料館などで常設展示されています。これらの施設では、華宵の作品だけでなく、当時の風俗やファッション、少年少女の生活なども紹介されています。

参考文献

数多くの書籍が華宵の作品や生涯について紹介されています。これらの書籍を通して、華宵の世界をより深く知ることができます。

高畠華宵は、大正ロマンを代表する画家として、現在もなお多くの人々を魅了し続けています。その独特の画風、華麗な経歴、そして波瀾万丈の人生は、後世に語り継がれるべき貴重なものです。

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