高等学校令

旧制高等学校令とその変遷

近代日本の教育制度において重要な役割を果たした旧制高等学校は、その歴史的変遷を理解する上で、高等学校令の変遷を学ぶことは不可欠です。本稿では、明治27年と大正7年に公布された2つの高等学校令について、その制定背景、内容、そして廃止に至るまでの過程を詳細に解説します。

第一次高等学校令：高等中学校からの転換

明治27年（1894年）に公布された第一次高等学校令（明治27年6月25日勅令第75号）は、それまで存在した高等中学校を高等学校に改組することを主要な目的としていました。これは、当時の文部大臣であった井上毅の主導によるものでした。高等中学校令が施行されることなく廃止された経緯を受け、高等中学校を新たな枠組みで再編する必要性があったのです。

第一次高等学校令の施行により、それまで存在した高等中学校（第一〜第五高等中学校、山口高等中学校、鹿児島高等中学造士館）のうち、第一から第五高等中学校、そして山口高等中学校は高等学校へと改組されました。一方、鹿児島高等中学造士館は一時廃校となりました。その後も、第六高等学校（岡山）、第七高等学校造士館（鹿児島）、第八高等学校（名古屋）が順次設立され、これらの学校は「ナンバースクール」と呼ばれ、帝国大学への進学予備校としての役割を担いました。第一次高等学校令においては、専門学科（法学部、工学部、医学部など）の設置が規定され、4年制の課程が設けられました。しかし、帝国大学進学のための予科が3年制として設置され、実際には予科が主体となる展開を見せました。この専門学科は、後に旧制専門学校へと発展していくことになります。

第二次高等学校令：高等普通教育の完成を目指して

大正7年（1918年）に公布された第二次高等学校令（大正7年12月6日勅令第389号）は、第一次高等学校令に代わり、高等学校を「男子の高等普通教育を完成する」ための機関と位置付けました。これは、大正6年（1917年）に設置された臨時教育会議における答申を踏まえたものでした。第二次高等学校令の施行により、第一次高等学校令は廃止されました。

第二次高等学校令は、高等学校の教育内容の拡大・充実を図ることを目的としていました。しかし、卒業生の多くは帝国大学に進学したため、帝国大学進学のための予科としての役割が依然として大きかったと言えるでしょう。入学試験の競争倍率は高く、入学は困難でしたが、一旦入学すると帝国大学への進学は比較的容易でした。このため、学生たちは学業のプレッシャーから解放され、自由な学生生活を送ることができたとされています。特に、学生寮での学生同士の交流は、人格形成において重要な役割を果たしたと評価されています。

第二次高等学校令では、高等学校の修業年限を7年制（尋常科4年、高等科3年）と定めつつ、高等科のみの3年制課程も認められました。実際には、官立高等学校の多くは3年制でしたが、公立・私立高等学校は7年制でした。高等科は文科と理科に分けられ、旧制中学校4年修了程度で高等学校受験が可能となりました。

改正と廃止

第二次高等学校令は、昭和16年、18年、21年、22年と幾度かの改正が行われました。昭和16年には国民学校令との整合性が図られ、昭和18年には戦争動員を意識した改訂が実施され、高等科の修業年限は2年に短縮されました。その後、昭和21年には3年制に戻され、昭和22年には「男子に」という記述が削除され、男女共学化への道が開かれました。

しかし、1947年（昭和22年）4月1日に施行された学校[[教育法]]により、第二次高等学校令は廃止されました。旧制高等学校の多くは、新制大学の教養学部や文理学部へと吸収されていきました。

まとめ

旧制高等学校は、近代日本の高等教育を担う重要な機関でした。高等学校令の変遷は、日本の高等教育制度の変容を反映しており、その歴史を理解することは、現代の教育制度を考える上で重要な意義を持つと言えるでしょう。

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