高築正子

高築 正子（たかつき まさこ）は、1947年に生まれた、日本の女子プロボクシング界の黎明期を築いた歴史的な人物です。特に、日本ボクシング史上初めてプロライセンスを取得した女性として知られています。

埼玉県蕨市出身の彼女は、小学生時代に柔道に励んでいましたが、日本で初めて行われたボクシングの世界バンタム級タイトルマッチをテレビで観戦したことで、ボクシングへの強い関心を持つようになりました。17歳になると、その情熱は抑えきれず、高校を中途退学してボクシングの世界に飛び込みます。元東洋太平洋スーパーフェザー級チャンピオンである勝又行雄氏が小岩で運営していたジムの門を叩き、ボクシングの基礎を学び始めました。

22歳になる頃には、地元の蕨市にある埼玉中央ボクシングジムでトレーナーとしてのキャリアをスタートさせ、男性の練習生を相手にスパーリングを重ねる日々を送りました。この経験が、後のプロキャリアの礎となります。

1974年4月18日には、後楽園ホールで開催されたイベントでエキシビションマッチを行い、日本のボクシングファンにその存在をアピールしました。

そして1976年8月、女子プロボクシングが正式に解禁されたばかりの米国カリフォルニア州ロサンゼルスへ、当時の協栄ボクシングジム会長であった金平正紀氏の紹介を受けて単身渡航します。ここでプロライセンスを取得し、同年9月30日にはオリンピック・オーデトリアムで待望のプロデビュー戦を飾りました。対戦相手は、女子プロボクサーの先駆者の一人であり、後に全日本女子プロレスでデビル雅美との異種格闘技戦も行ったレディー・タイガーことマリアン・トリミアーでした。デビュー戦は残念ながら判定負けを喫しましたが、その後も米国で精力的に活動を続け、全米ウェルター級ランキングで5位にまで上り詰める活躍を見せ、一躍日本のメディアでもその名が報じられ、話題を呼びました。

1978年に日本へ帰国した高築氏は、女子ボクサーとして初めて日本のリングに立ち、キックボクサーを相手に試合を行いました。この頃、全日本女子格闘技連盟（コミッショナー：山口シヅエ氏）によって認定された全日本女子プロボクシング王座を獲得するなど、日本の女子ボクシング普及に大きく貢献しました。

1982年、35歳で現役を引退。プロキャリアの通算戦績は15戦12勝（※詳細不明）2敗1分けという輝かしいものでした。引退後、彼女は新たな道を歩み始めます。

ボクシング界から一時離れ、千葉県流山市で居酒屋を経営しました。その後、元WBC世界ライト級チャンピオンのガッツ石松氏の紹介により、栃木県小山市にある「フィットネス・スパTRS」でトレーナーとして約5年間指導に携わりました。そして2012年からは、再び地元である埼玉県に戻り、スパイダー根本ジムで指導者として後進の育成に当たっています。現在も現役のトレーナーとして活動しており、その経験と技術を伝えています。

近年もメディアへの出演があり、2010年7月8日放送のテレビ番組「新感覚ゲーム クエスタ」や、2023年10月23日放送の日本テレビ「月曜から夜ふかし」の街頭インタビュー、2025年5月放送のテレビ朝日「ナニコレ珍百景」などに出演し、日本初の女子プロボクサーとしての自身の軌跡や、現在の活動について紹介される機会がありました。

高築正子は、女子ボクシングがまだ一般的ではなかった時代に、情熱と強い意志を持ってプロの道を開拓したパイオニアです。彼女の活躍は、その後の日本の女子ボクシングの発展に計り知れない影響を与えました。選手としてだけでなく、引退後も指導者としてボクシングに深く関わり続け、日本のボクシング界において重要な存在であり続けています。

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