高緯

高緯について

高緯（こう い）は北朝北斉の第5代皇帝で、武成帝高湛の嫡出長男として生まれました。彼の母は胡皇后で、彼自身は後に「後主」と呼ばれることになります。

生涯の始まり

高緯は河清4年（565年）に皇位を引き継ぎ、天統4年（568年）に父の死を受けて親政を始めました。初めての試みとして文林館を創設しましたが、残念ながら彼の政治判断は賢明とはいえず、和士開や高阿那肱、穆提婆といった奸臣を重用し、国力の低下を招いてしまいました。

彼の統治の結果、重臣や王族は讒言や権力争いに巻き込まれ、次々と命を落としました。特に、斛律光の粛清は大きな影響を及ぼし、軍事力は衰退。ちょうどそのころ、強大な敵である陳国から国土を侵される危機が迫りました。

北周の脅威

北周の武帝宇文邕は侵略の機会を見逃さず、武平6年（575年）に北周軍の侵攻が始まります。北斉の国土は次第に侵食され、副都である晋陽も陥落の危機に瀕していました。皇帝である高緯は逃亡を選択し、高延宗に防衛を任せましたが、最終的には失敗し、捕縛されてしまいます。

終焉

承光元年（577年）になると、高緯は長男の高恒に皇帝位を譲りますが、彼自身は国を逃げ回る羽目になります。結果的には信任した部下に裏切られ、孤立無援の状態に。最終的には青州で北周軍に捕らえられ、北斉はついに滅亡しました。彼はその後、元側近の穆提婆と共に反乱を企てますが、失敗し、22歳という若さで命を落としました。

逸話と人柄

高緯は芸術的な一面も持ち合わせており、自ら琵琶を演奏して「無愁の曲」を作曲しました。その際、近侍が一斉に和声を合わせたため、民間では彼を「無愁天子」と呼ばれることもありました。

また、異母兄弟の高綽に人々を苦しめる遊びについて尋ね、「蠍をたくさん入れた穴の中に人を入れてもがき苦しむ様を見るのが楽しかった」との答えに、「それを隠していたとは」と驚いたエピソードも残っています。韓国の陥落を目指したときは、馮淑妃の化粧に時間を取られてしまい、攻撃をやめたために陥落できなかったという失敗もありました。

家族と後継者

高緯の正室には斛律皇后、胡皇后、そして穆黄花の3人がいました。また、いくつかの側室も持ち、子供には幼主の高恒や東平王の高恪がいます。系譜については『新唐書』に記載されており、高氏一族は古代の王族に連なる家系とされています。末裔については、『新撰姓氏録』に摂津国の温義氏が後主の子孫を称していたとの記録があります。

高緯の短い生涯は、彼の政治的な無能さからも、時代の流れからも示されるように、王朝の興亡に深くかかわっていました。

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