高見山大五郎 (1944年生)

髙見山 大五郎

アメリカ合衆国ハワイ準州（当時）マウイ島出身の元大相撲力士、髙見山大五郎（たかみやま だいごろう）。本名はジェシー・ジェームス・ワイラニ・クハウルア（米国籍時）、後に渡辺 大五郎。高砂部屋に所属し、最高位は東関脇。史上初の外国出身関取および幕内最高優勝力士として、大相撲の歴史にその名を刻みました。

来歴と入門

高校時代に砲丸投げやアメリカンフットボールに打ち込みましたが、交通事故で足に重傷を負い、スポーツの道を断念。運送会社勤務を経て、1964年（昭和39年）に相撲関係者の紹介でスカウトされ来日しました。初めて体験する日本の冬の寒さに驚きながらも、高砂部屋に入門。同年3月場所で初土俵を踏みました。入門当初は日本の食事、特にちゃんこに馴染めず苦労しましたが、おかみさんの助けや工夫（ケチャップを使うなど）で克服。体が非常に硬く、股割りの稽古では「目から汗が出た」という名言を残すほど苦労しましたが、師匠である高砂親方（元横綱前田山）からの熱心な指導を受けました。

力士としての歩み

1967年（昭和42年）3月場所、初土俵からわずか3年で新十両に昇進。これは史上初の外国出身・外国籍の関取誕生でした。翌1968年（昭和43年）1月場所には新入幕を果たし、ここでも初の外国出身・外国籍幕内力士となります。幕内では早くから佐田の山や柏戸といった横綱から金星を獲得するなど活躍。1969年（昭和44年）11月場所には小結に昇進しますが、その後しばらく三役と平幕を往復する時期が続きました。師匠の死後、一度は廃業も考えましたが、周囲の励ましで現役続行を決意します。

転機となったのは1972年（昭和47年）7月場所。13勝2敗という好成績で、外国出身力士として史上初の幕内最高優勝を達成しました。この快挙は日米双方で大きなニュースとなり、当時のニクソン大統領からも祝電が寄せられました。この優勝を受けて、翌場所には外国出身で初の関脇に昇進し、大関候補とも目されました。しかし、相撲の不安定さから大関昇進は叶いませんでした。

長い現役生活も髙見山を語る上で欠かせません。40歳近くまで土俵に上がり続け、幕内連続出場1231回という記録を樹立しました。高校時代の事故による足腰の脆さも指摘されましたが、大きな怪我が少なく長きにわたって活躍しました。

引退とその後

「40歳まで相撲を取りたい」「両国国技館で相撲を取りたい」と語っていましたが、1984年（昭和59年）5月場所、40歳を目前に力尽き引退を表明。場所中の唐突な引退発表は大きな注目を集めました。引退会見では「20年間相撲を取り続けたことを誇りに思う」「生まれ変わっても力士になりたい」と語りました。

引退後も角界に残るため、現役中の1980年（昭和55年）に日本国籍を取得し、渡辺大五郎と名乗りました。引退後は年寄・東関を襲名し、後進の指導にあたります。特に、自らハワイでスカウトした曙を横綱まで育て上げ、大相撲の国際化に大きく貢献しました。また、弟子の高見盛も人気力士となり、師弟二代で角界を盛り上げました。

2009年（平成21年）に日本相撲協会を定年退職。その功績は大きく、アメリカ合衆国下院から感謝決議を受け、菊池寛賞やスポーツ功労者にも選ばれています。定年後もメディア出演や相撲関連のイベントに参加し、近年はスポーツジム通いで減量に成功するなど、健康的な生活を送っています。弟子の潮丸（13代東関）が若くして亡くなった際には、その死を悼みました。

功績と人物像

髙見山の最大の功績は、外国出身力士のパイオニアとして、後のハワイ勢をはじめとする多くの外国人力士が活躍する道を開いたことです。幕内在位97場所、通算12個の金星（輪島から7個）など、記録にも残る力士でした。特に輪島や貴ノ花といった強豪との対戦は人気を博しました。

陽気なハワイアンでありながら、異国での厳しい相撲修行に耐え抜いた精神性は多くの人々に感銘を与えました。独特のハスキーボイス（扁桃腺の手術と稽古での怪我が原因とされる）や長いもみあげといった個性的なルックスも相まって、相撲ファン以外にも広く愛されました。「二倍二倍！」のフレーズで一世を風靡した丸八真綿をはじめ、多くのテレビCMにも出演するなど、タレントとしても活躍しました。

エピソード

来日時の冬の寒さに「間違ってシベリアに来てしまった」と震え上がった。
体が硬く、股割りの際に「目から汗が出た」と語ったとされる。
ベトナム戦争の徴兵検査で体重超過により不合格となり、相撲の道を続けられた。
現役時代、プロレス転向の噂が立ち騒動になったことがあるが、本人は否定している。
独特のハスキーボイスは、手術後の稽古で喉を痛めたため。
丸八真綿のCM「二倍二倍！」は社会現象となり、物真似する人も多かった。
相撲界では珍しくギャンブル嫌いだった。
愛弟子の曙をスカウトした際、最初は体型から相撲は無理だと思ったという。

髙見山大五郎は、その相撲人生を通じて、日本の国技である大相撲に新しい風を吹き込み、国際的な魅力を高める上で多大な貢献を果たした偉大な力士と言えるでしょう。

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