高谷道男

高谷道男

高谷道男（たかや みちお、1891年10月12日 - 1994年3月21日）は、日本の経済学者であり、内村鑑三の弟子として、またジェームス・カーティス・ヘボンの研究家としても知られています。彼は、キリスト教信仰と学問への深い情熱を生涯にわたり持ち続け、教育者、研究者として多大な貢献をしました。

生涯

生い立ち

1891年（明治24年）、香川県丸亀市で呉服商の家に生まれました。幼少期に家業が傾き困窮しましたが、勉学の才能を認められ、親族の支援を受けながら東京高等商業学校（現一橋大学）に進学しました。この頃から、育英会の奨学金を受けるなど、経済的な困難を乗り越えながら学問を追求する姿勢が垣間見えます。

キリスト教との出会い

キリスト教との出会いは、兄から贈られた英語聖書がきっかけでした。さらに、肋膜炎で入院中に、内村鑑三を紹介され、彼の聖書講義に感銘を受けました。内村を生涯の師と仰ぎ、柏木教友会、白雨会にも参加しました。白雨会では、後に東京大学総長となる南原繁や関東学院を創立した坂田祐など、錚々たるメンバーと共に交わりを深めました。

神戸時代

東京高等商業学校卒業後、神戸で就職しましたが、キリスト教伝道者になる決意を固め、丸亀基督教会で洗礼を受け、神戸神学校に入学しました。神学生時代には、教会で伝道師の役割を担い、賀川豊彦の誘いを受け、神戸YMCAの主事に就任しました。ここで、青年の育成に尽力し、YMCAの風紀刷新に貢献しました。また、賀川の勧めでトルストイの『簡易聖書』を翻訳出版し、翻訳家としても活動を始めました。

留学と奉職

1920年（大正9年）、坂田祐の依頼を受け、関東学院高等商業部開設準備のため、アメリカのミシガン大学へ留学しました。帰国後、関東学院教会を創立し、中居京牧師就任まで牧師の代行を務めました。関東学院では不遇な時期もありましたが、その間、学問研究に打ち込み、自らの学問的立場を示す『基督教経済文化史』を著しました。この著作は、上田辰之助や南原繁から高く評価されました。

ヘボンとの出会い

1944年（昭和19年）、関東学院高等商業部が明治学院に統合されるに伴い、高谷は明治学院に移籍しました。明治学院では図書館長を務め、そこでヘボンが編纂した『和英語林集成』の自筆原稿を目にし、深い感銘を受けました。東京大空襲の際、ヘボンの原稿を東北学院に疎開させ、戦後、ヘボンの研究に本格的に取り組み始めました。文部省の助成金を得て『ドクトル・ヘボン』を出版し、ヘボンの業績を広く世に知らしめました。

新資料発見

1956年、ヘボンの資料を求めてアメリカに渡りました。現地の様々な機関の協力を得て、ヘボンやS・R・ブラウン、グイド・フルベッキらの貴重な史料を発見しました。これらの資料をもとに、『ヘボン書簡集』を出版し、大きな反響を呼びました。特に、大塚金之助教授から高く評価されました。その後、人物叢書『ヘボン』を出版し、ヘボンの名がさらに広く知られることになりました。

明治学院退任後

1964年に明治学院大学大学院教授を退任し、その後、桜美林大学教授に就任しました。桜美林大学では経済学部創設に尽力し、初代学部長を務めました。また、ヘボン来日100周年を記念して、多くの記念行事や出版に関わりました。さらに、『S.R.ブラウン書簡集』、『フルベッキ書簡集』を出版しました。タウンゼント・ハリスの研究にも取り組み、従来のハリス像を覆す新しい視点を提示しました。

晩年

晩年は、横浜開港資料館の設立に尽力しました。旧イギリス領事館の建物を活用した開港資料館設立に向け、開港史料普及協会の理事として活動しました。横浜プロテスタント研究会を設立し、晩年まで研究活動を続けました。1992年には『横浜キリスト教文化史』を出版しました。1977年に横浜文化賞、1979年に都留スミス賞、1981年にキリスト教功労賞を受賞しました。1982年に桜美林大学、1988年に明治学院大学から名誉[[教授]]の称号を贈られました。100歳を迎えた際には、ブッシュ米大統領からメッセージが届きました。1994年3月21日、102歳で生涯を閉じました。告別式は、ヘボンが設立した横浜指路教会で行われました。

著書

基督教経済文化史
目で見る宣教百年史（編著）
ドクトル・ヘボン
ヘボン
ヘボン書簡集（編訳）
ヘボンの手紙（編訳）
ブラウン書簡集　幕末明治初期宣教記録（編訳）
フルベッキ書簡集（編訳）
ヘボン在日書簡全集（補訳・解説を含む）

脚注

参考文献に記載

高谷道男は、キリスト教への深い信仰と、学問への情熱を生涯持ち続けた人物でした。彼の研究は、日本のプロテスタント史研究に大きな影響を与え、多くの人々に感銘を与えました。

もう一度検索