高輪築堤

高輪築堤

高輪築堤は、明治初期に東京湾の浅瀬に建設された、日本初の鉄道を敷設するための堤防です。当時の海岸線に沿って、本芝から品川までの約2.7kmにわたり築かれました。この築堤は、単に鉄道を敷くための土台ではなく、日本の近代化を象徴する重要な遺構として、その歴史的価値が再評価されています。

建設の背景

明治時代初期、日本で初めて鉄道を建設する際、高輪周辺には軍事施設や旧藩邸があり、国防上の理由から用地の確保が難航しました。そのため、当時の大隈重信が海上に鉄道を敷設するという画期的な決断を下し、イギリス人技師エドモンド・モレルの指導のもと、高輪築堤の建設が始まりました。この決断は、日本の鉄道史において重要な転換点となりました。

構造の特徴

高輪築堤の建設には、幕末に建設された台場の技術が応用されました。石材には、未完成の台場や高輪海岸の石垣が転用され、日本の在来技術と西洋の近代技術が融合した構造となっています。築堤は、海上に土手状に盛られた「橋台」で構成され、全長約2655メートル、高さは海面から3～4メートル、最上部の幅は約6.4メートルでした。当初は単線でしたが、後に複線化されました。築堤には、河川や漁船の出入りを考慮した水路が設けられ、橋梁が架けられました。石積みの下には杭基礎が打ち込まれ、盛り土の流出を防ぐために工夫が凝らされました。

発掘と保存

鉄道の線路付け替えや東京湾の埋め立てによって、高輪築堤は地中に姿を消しましたが、2019年、品川駅改良工事中に石垣の一部が発見され、その存在が再確認されました。この発見を機に、高輪築堤の調査が進められ、その歴史的価値が改めて認識されました。しかし、JR東日本は、再開発計画の見直しを懸念し、全面的な保存には難色を示しました。これに対し、日本考古学協会をはじめとする多くの団体が、築堤の全面保存を求めました。文化審議会もその歴史的価値を認め、現地保存を求める意見を表明しました。

最終的に、JR東日本は再開発計画を一部見直し、築堤の一部を現地で保存することになりました。また、移築保存や公開展示も行われています。2021年9月には、「旧新橋停車場跡及び高輪築堤跡」として国史跡に指定され、その歴史的価値が公に認められました。

保存と公開の現状

現在、高輪築堤の一部は、高輪ゲートウェイ駅周辺の再開発エリア内で保存・公開されています。特に、第七橋梁の一部は現地保存され、公園内に組み込まれています。また、築堤の石材は、各地の博物館や学校などに移築され、展示されています。これらの取り組みにより、高輪築堤は、過去の遺構としてだけでなく、歴史を学ぶ場としても活用されています。

今後の展望

高輪築堤は、その建設技術や歴史的背景から、日本の近代化を語る上で欠かせない遺産です。今後も、その価値を広く伝え、後世に継承していくための取り組みが求められています。また、高輪築堤の保存・公開を通じて、日本の近代史や鉄道の歴史に対する理解を深め、新たな文化創造につなげていくことが期待されます。

関連する場所

高輪橋架道橋下区道：第七橋梁に併設された水路がアンダーパスとなった場所。
雑魚場架道橋：第四もしくは第五橋梁下の溝渠に相当する場所。
新浜町ガード：第二橋梁下となる旧会津藩蔵屋敷の掘割に相当すると目される場所。
芝橋ガード：第三橋梁の後身となる場所。かつて入間川に架かっていた橋梁。

関連作品

* 梶よう子『我、鉄路を拓かん』：高輪築堤の土木工事を請け負った平野弥十郎を主人公とした歴史小説。

高輪築堤は、単なる鉄道遺構ではなく、日本の近代化を象徴する重要な文化遺産です。その歴史的価値を理解し、未来に繋げていくことが求められています。

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