高野会館

高野会館：東日本大震災の記憶を伝える震災遺構

高野会館は、宮城県本吉郡南三陸町に位置する東日本大震災の震災遺構です。数少ない民間所有の施設として、震災の教訓を後世に伝えています。

概要

1986年に建てられた鉄筋コンクリート構造4階建ての建物は、志津川湾から約300メートルの場所に位置していました。株式会社阿部長商店が所有し、「ブライダルパレス高野会館」として結婚式や法事など、地域住民に親しまれていました。災害時には避難場所としての役割も担えるよう、基礎は通常の倍の強度で設計され、津波避難ビルにも指定されていました。

震災発生時の状況

2011年3月11日、震災発生時、高野会館では高齢者の芸能発表会が開かれていました。突然の激しい揺れと停電により、会場は一時パニックに陥りました。しかし、当館の営業部長（元漁師）が、海面が大きく下がるのを目撃し、津波の襲来を察知。従業員とともに、避難しようとする高齢者たちを屋上へ誘導しました。

建物は津波に襲われ、3階と4階の間、高さ17メートルまで浸水。瓦礫が流れ込む中、屋上に避難した約330名は九死に一生を得ました。近くの病院から流されていく入院患者も目撃されるなど、凄惨な状況でした。避難者たちは屋上で一夜を明かし、翌朝、従業員が救助を要請、全員無事に救出されました。

震災遺構としての保存

震災後、高野会館は南三陸ホテル観洋が管理しています。通常は立ち入り禁止ですが、ホテルが催行するツアーに参加することで、内部を見学できます。当初、町内の他の被災建造物も保存が検討されましたが、財政的な問題から断念。高野会館は、町内で唯一残存する民間の被災建造物となりました。2019年には、国土交通省の震災伝承施設に登録されています。

震災を風化させないための取り組み

ホテル観洋では、震災を風化させないため、高野会館や戸倉小学校、防災対策庁舎などを巡るバスツアーを毎日実施しています。従業員の語り部による案内は、多くの人々に感動を与え、2017年には「ジャパン・ツーリズム・アワード」大賞を受賞しました。2022年1月時点で、ツアーの参加者は延べ42万人に達しています。

現在の課題

震災後、高野会館周辺はかさ上げされ、国道45号線は建物の約10メートル上を通るようになりました。阿部長商店は、高野会館周辺道路の整備や、近隣の震災復興祈念公園やさんさん商店街との回遊性を高める通路の設置を南三陸町に要望しています。

高野会館は、震災の記憶を伝える貴重な遺構として、これからもその存在意義を輝かせ続けるでしょう。

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