鬼室集斯

鬼室 集斯（きしつ しゅうし）

鬼室集斯は生年が不明であり、持統天皇2年11月8日（688年12月5日）頃に亡くなったとされる7世紀の百済の貴族であり、百済復興運動に影響を与えた重要な人物です。彼は百済復興の立役者である鬼室福信の親族であり、百済での官職は達率でした。日本に亡命後、彼は小錦下と学職頭の位を得ています。

人物と来歴

鬼室集斯は、天智天皇2年（663年）に白村江の戦いを経て、一族とともに日本に移り住みました。『日本書紀』によると、彼は天智天皇4年（665年）2月に小錦下に任命されました。この際、佐平福信の功績が関連していると考えられていますが、集斯と福信の具体的な関係は不明です。集斯が受けていた百済での役職は達率であり、近江国神前郡に多くの百済の人々と共に暮らしていたとされています。

彼はその後、天智天皇8年（669年）に佐平余自信と共に近江国蒲生郡に移され、多くの百済人と共に生活を続けました。そして天智天皇10年1月（671年）には再び小錦下の位を授与されました。この時、彼は学職頭と呼ばれており、これは律令制における大学頭の前身とされる役職です。久木幸男によれば、集斯が蒲生郡に転居してからの約1年の間に、日本の大学寮の基礎が形成され、彼がその長となったという説もあります。

子孫

鬼室集斯の子孫は、天平宝字5年（761年）に百済公に改姓を許されるなど、彼の遺志は後世に引き継がれることとなります。

遺跡など

江戸時代には、近江国蒲生郡小野村の西宮神社の周辺に石の八角柱が存在しました。この石は当初「人魚塚」と称されていましたが、仁正寺藩医である西生懐忠の調査により「鬼室集斯墓」とされることが知られるようになりました。西生懐忠は、墓碑の正面にその名前が、右側に「朱鳥三年戊子十一月八日殞」とあり、左側には「庶孫美成造」との刻まれていることを発表しました。朱鳥3年は持統天皇2年にあたるものの、この墓石自体は11世紀以降のものであるため、その真偽については議論があります。

墓碑の真偽については様々な研究がなされており、古代の墓碑における死亡表記や「庶孫」という表記の有無がその信憑性を疑問視する要因となっています。明治時代には不動堂から西宮神社に改名され、新たに軻遇突智命が祭神として祀られるようになります。さらに、鬼室集斯が合祀されることにより、その名は現在にまで引き継がれています。

また、『大安寺資財録抜書』には、滋賀県野洲市大篠原に鬼室集斯の墓が存在したことが記載されています。さらに、1994年には日野町の野田道遺跡からオンドルに似た遺構が発見され、集斯に関する記述の裏付けとなるものとして注目されています。

このように鬼室集スは、古代の日本・百済の交流の中で重要な役割を果たし、その後もその影響は歴史の中に色濃く残り続けています。

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