楊戯

楊戯（よう ぎ）

楊戯（よう ぎ、字は文然）は、中国三国時代の蜀漢に仕えた政治家です。益州犍為郡武陽県（現在の四川省眉山市彭山区）の出身で、『季漢輔臣賛』の著者として後世に名を残しました。『三国志』蜀書に独立した伝が立てられています。

生涯

若くして張表らと共にその名を知られ、諸葛亮からも高く評価されていました。20歳余りで州の書佐から督軍従事となり、軍内部の裁判を司りました。彼の裁定は公正であると評判を呼び、丞相府に召し出されて主簿に任じられました。諸葛亮の死後、尚書右選部郎に任命されますが、蔣琬の要請により治中従事史となります。蔣琬が大将軍として府を開くと、東曹掾として迎えられました。

その後、南中郎参軍に昇進し、庲降都督の張表の副将として建寧太守を兼任しました。しかし、病のため成都に召還され、護軍監軍に任命されます。後に再び地方に出て梓潼太守を拝命し、また中央に戻り射声校尉となりました。どの役職においても清廉潔白で飾り気がなく、細かなことにこだわらなかったと伝えられています。

延熙4年（241年）には、自身が著した『季漢輔臣賛』を完成させました。

延熙20年（257年）、姜維らと共に芒水へ出陣した際、かねてから姜維を嫌っていた楊戯は、酒宴の席で姜維を嘲るような発言を繰り返しました。姜維は平静を装っていましたが、内心は穏やかではありませんでした。帰還後、姜維の意を受けた者から上奏があり、楊戯は免官となり、庶民に落とされてしまいました。

景耀4年（261年）に亡くなりました。

人物評

陳寿は楊戯について、「怠惰で仕事もいい加減にする性分であったが、人に取り入るようなことを言わず、過度の愛情をもって人に接することもなかった」と評しています。しかし、旧友への援助は惜しまなかったとされています。また、当時は評価が低かった譙周を高く評価し、「我々の子孫は譙周に及ばないだろう」と称賛しました。

蔣琬との議論の際、楊戯が返事をしないことが度々ありました。楊戯を良く思わない者が蔣琬に「楊戯は公と話しても返事をしません。これは思い上がりではないでしょうか」と告げ口をしました。すると蔣琬は、「人の心がそれぞれ違うのは、顔が違うのと同じである。表面的には従っておいて後からあれこれ言うのは、昔の人が戒めていたことだ。楊戯がもし私の言葉に賛成すれば、それは彼の本心からではないだろうし、反対すれば、私の欠点を指摘することになる。だから黙っているのだ。これは楊戯の美点である」と答えました。

参考文献

* 「正史 三国志 5 蜀書」（陳寿 著、裴松之 注、井波律子 訳）ちくま学芸文庫 ISBN 4-480-08045-7

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