魔鏡

魔鏡とは

魔鏡とは、一見すると普通の鏡のように見えますが、特定の条件下で模様や像が浮かび上がる不思議な鏡のことです。特に銅鏡でこの現象が見られます。平行な光や点光源からの拡散光を反射させると、鏡の表面のわずかな歪みが反射光に濃淡を生み出し、結果として像が浮かび上がります。

原理

魔鏡の原理は、鏡面に存在する微細な凹凸にあります。この凹凸は、肉眼ではほとんど認識できないほど微細です。しかし、太陽光のような平行光線を反射させると、凸部では光が散乱して暗く、凹部では光が集束して明るくなります。この光の明暗によって模様が現れます。通常の状態では鏡として機能しますが、反射光を当てる距離を数メートル程度離すと、模様がはっきりと見えるようになります。

製法

魔鏡は青銅で鋳造された後、鏡面が研磨されます。研磨の過程で鏡が一定以上の薄さになると、研磨の圧力によってわずかに歪みます。特に、鏡の裏側に文字や像などの凹凸がある場合、厚みの違いによって歪み方が変わり、鏡の表面に極めて微細な凹凸が生まれます。この微細な凹凸が魔鏡の秘密であり、模様を浮かび上がらせる原理となっています。

歴史

魔鏡の歴史は古く、中国の漢の時代にはすでに存在していたとされています。現在確認されている最古の魔鏡は、紀元前1世紀頃の前[[漢]]時代に作られた「透光鑑」と呼ばれる鏡です。

日本では、古墳時代の三角縁神獣鏡で魔鏡の現象が確認されています。また、17世紀には隠れキリシタンの間で、キリスト教のシンボルを隠したまま浮かび上がらせる「隠れ切支丹鏡」が作られました。

手作業による魔鏡製作技術は、山本合金製作所などが継承しています。1974年には、無形文化財保持者の山本真治（凰龍）氏が、先代が途絶えさせていた魔鏡の復元に成功しました。その後、1990年と2014年には、隠れ切支丹鏡がローマ教皇に献上されています。

1877年には、東京大学教授のロバート・ウィリアム・アトキンソンが魔鏡を「Japanese Mirror」として紹介し、1878年にはW. E. AyrtonとJ. Perryによって、日本魔鏡の謎が解明されました。

現代における魔鏡

現在では、神奈川県大磯町にある澤田美喜記念館に切支丹魔鏡が展示されています。また、コベルコ科研では魔鏡の原理を応用し、鏡面の微細な凹凸を強調する技術を「魔鏡システム」と名付けています。

海外の魔鏡

ヨーロッパでは、魔鏡は文学作品に登場することが多いです。しかし、その多くは通常の鏡であり、魔法の道具や魔よけとしての役割を担っています。例えば、『白雪姫』に登場する魔法の鏡などが該当します。日本の魔鏡とは異なり、物理的な原理に基づいたものではありません。

参考文献

永田信一『図解 レンズがわかる本』日本実業出版社、2002年。
“魔鏡　山本晃久”. AMeeT “Express Yourself”（一般財団法人NISSHA財団）, 2021年11月30日.

外部リンク

「魔鏡」とは？　日本で唯一、一見普通の鏡が映し出す神：朝日新聞デジタル

関連項目

魔法の鏡
マジックミラー

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