魚住和晃

魚住和晃（1946年 - ）は、日本の書研究者であり、書論、書跡学を専門としています。神戸大学名誉教授の肩書を持ち、日中の書道史研究に尽力しました。特に筆跡鑑定学の分野では第一人者として知られ、その鑑定は、神戸連続児童殺傷事件の犯行声明文や、一澤帆布工業の遺言書など、社会的に注目を集めた事件にも深く関わっています。

三重県に生まれた魚住氏は、東京教育大学芸術学科を卒業後、同大学院教育学研究科修士課程を修了しました。1997年には、その作品10点が大英博物館に収蔵されるという栄誉に浴しています。2000年には、「張裕釗書法における理念形成と形象の研究」により神戸大学から文学博士号を授与されました。その後、神戸大学教育学部助教授、国際文化学研究科教授を歴任し、2010年に定年退任。名誉教授となると同時に、天津大学の客員教授にも就任しました。

魚住氏の研究は、書道史における重要な貢献として高く評価されており、特に中国の書家、張裕釗の研究は、その書法の理念形成と形象に迫るもので、書道界に大きな影響を与えました。また、筆跡鑑定の分野では、科学的な分析と深い知識に基づいた鑑定で、数々の事件の真相解明に貢献しました。

受賞歴も数多く、1973年の謙慎書道展推薦顧問賞、1976年の毎日書道展毎日賞、1987年の読売書法展読売新聞社賞、1988年の謙慎書道展梅花賞など、その功績は広く認められています。

著書も多数あり、『宮島詠士 人と芸術』、『張廉卿 悲憤と憂傷の書人』、『「書」と漢字 和様生成の道程』、『現代筆跡学序論』、『書を楽しもう』、『張廉卿の書法と碑学』、『書の十二則』、『筆跡鑑定ハンドブック』、『書聖 王羲之 その謎を解く』、『筆跡鑑定入門 ニセ遺言書、文書偽造を見破るには』、『書道史 謎解き三十話』、『日本書道史新論　書の多様性と深みを探る』など、書道史や筆跡鑑定に関する幅広いテーマを扱っています。また、『張裕釗書作集』や『茶掛を読む 2 墨跡』などの編著も手がけています。

さらに、漫画の原作も手がけており、『マンガ書の歴史 殷-唐』、『マンガ書の歴史 宋-民国』、『マンガ「書」の歴史と名作手本 王羲之と顔真卿』、『マンガ「日本」書の歴史』、『マンガ「書」の黄金時代と名作手本 宋から民国の名書家たち』など、書道の歴史を分かりやすく解説した作品を世に送り出しています。

魚住和晃氏は、書研究者、筆跡鑑定家として、日本の書道界に多大な貢献をしてきました。その研究成果と教育活動は、今後も長く影響を与え続けることでしょう。

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