鱒沢館

鱒沢館（ますざわやかた）

鱒沢館は、現在の岩手県遠野市（旧宮守村）に位置していた日本の城です。別名として上町館とも呼ばれています。

歴史

築城年代は明らかではありませんが、室町時代から戦国時代にかけて、遠野阿曽沼氏の一族である鱒沢氏が本拠としていました。鱒沢館は、かつての陸奥国閉伊郡上鱒沢村に位置しています。

鱒沢館の城跡は、猿ヶ石川の流域、長泉寺の裏手から伸びる笠通山の尾根筋の端にあります。斜面には7〜8段の階段状の平坦地が設けられ、周囲は空堀で囲まれた山城としての構造を持っています。

「阿曽沼氏略系」によれば、遠野横田城の城主であった阿曽沼光綱の次男、守綱が遠野保のうち鱒沢と小友村の半分を領有し、上町に館を築いたのが始まりとされています。鱒沢は、遠野と北上川流域、さらには三陸地方を結ぶ交通の要所であり、阿曽沼氏は一族を五輪峠を挟んだ江刺と遠野を結ぶ要衝の地に配置しました。三男である守儀も隣郷綾織の宇夫方氏を継いでいます。

天正18年（1590年）には、阿曽沼氏が小田原参陣を拒否したことにより、領主権を没収され、南部氏の配下となりました。しかし、天正20年（1592年）の「諸城破却書上」には、「閉伊郡之内 増沢 山城 浅沼忠次郎 持分」と記載されており、破却は免れたことがわかります。

慶長5年（1600年）には、鱒沢佐馬助広勝らが南部氏と結び、阿曽沼一族の内紛に乗じて主家である阿曽沼広長に反旗を翻し、広長を気仙方向へ追放しました。しかし、広勝は遠野奪還を企てて攻め込んできた阿曽沼広長の軍勢との戦いで討ち死にしました。

その後、南部家の家臣として遠野の所領を安堵された鱒沢氏でしたが、鱒沢広勝の子である忠右衛門が謀反の疑いにより誅殺され、鱒沢氏は滅亡しました。

構造

階段状の平坦地: 斜面に7-8段にわたって設けられた平坦地。
空堀: 城の周囲を囲む防御施設。

現在

鱒沢館の正確な場所と遺構の詳細は、現地の案内板や関連資料をご確認ください。

参考文献

『岩手県史 第3巻 中世篇 下』岩手県、1961年10月20日
児玉幸多、坪井清足『日本城郭大系 第2巻 青森・岩手・秋田』新人物往来社、1980年7月15日。
「角川日本地名大辞典」編纂委員会『角川日本地名大辞典 3 岩手県』角川書店、1985年。ISBN 4040010302。
岩手県教育委員会 1986「鱒沢館」『岩手県文化財調査報告書82：岩手県中世城館跡分布調査報告書』岩手県教育委員会 p.242
村田修三『図解中世城郭辞典 第一巻』新人物往来社、1987年4月25日。
（有）平凡社地方資料センター『日本歴史地名大系 第3巻 岩手県の地名』平凡社、1990年7月13日。ISBN 4-582-91022-X。

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