鳥之石楠船神

鳥之石楠船神について

鳥之石楠船神（とりのいわくすふねのかみ）は、日本の神話において重要な役割を持つ神であり、また彼を象徴する神秘的な船の名前でもあります。この神には別名があり、天鳥船神（あめのとりふねのかみ）、天鳥船（あめのとりふね）とも呼ばれています。彼に関する系図では、天夷鳥命（あまのとりど）や他の神々と同一視されることがあります。

神話の中での位置づけ

鳥之石楠船神は、神産みのエピソードにおいてイザナギとイザナミの間に誕生した神です。その後、彼は『古事記』の葦原中国平定の段に登場し、建御雷神の副使として葦原中国へ派遣されます。この際、彼は事代主神の意向を確認するために使者として送り出されました。

しかし、『日本書紀』では同じ場面において、鳥之石楠船神は登場せず、代わりに稲背脛という別の神が事代主神の使者として派遣されます。この稲背脛は「熊野諸手船、またの名を天[合＋鳥]船」という名の船に乗って日本を旅したと伝えられていますが、『古事記』では天鳥船神がその役割を担っていることが記述されています。また、この熊野諸手船は、美保神社の諸手船神事の元となっています。

蛭子の流れ

さらに、『日本書紀』の神産みの段では、イザナギとイザナミが蛭子を天磐櫲樟船（あめのいわくすふね、または鳥磐櫲樟船とも）に乗せて流したエピソードがありますが、『古事記』ではこの蛭子は鳥之石楠船神ではなく、葦船（あしぶね）に乗って流されたとされています。

考察

国譲りの使者に関しては各史料において異なる神々が伝えられており、建御雷神、経津主神、鳥之石楠船神、稲背脛、天夷鳥命などがそれに関与しています。建御雷神を除き、残る神々は同じ神を指しているという見解が一般的です。これに基づくと、経津主神や鳥之石楠船神、稲背脛、天夷鳥命は、同じ系統の神々であると考えられます。これらの先祖祭祀の氏族が共通していることから、『神道大辞典』においては出雲国造と鳥之石楠船神が同一視される見解が紹介されています。結果として、『古事記』と『日本書紀』における記述の相違は、使者の主従関係に過ぎないことが浮かび上がります。

鳥之石楠船神を祀る神社

残念ながら、鳥之石楠船神を祭る神社の数は多くありませんが、いくつかの神社で彼を祀っています。具体的には、千葉県の神崎神社、東京都墨田区にある隅田川神社、茨城県東茨城郡の石船神社、神奈川県横浜市南区の大鷲神社、埼玉県所沢市の鳥船神社、そして佐世保市大塔町の鎮守神社などが有名です。

これらの神社は、鳥之石楠船神への信仰の場として多くの人々に親しまれており、それぞれの地域社会での神道の儀式や祭りに深く結びついています。このように、鳥之石楠船神は日本の神話と現代の信仰とを繋ぐ重要な存在であるといえるでしょう。

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