鳥刺し (将棋)

鳥刺し：振り飛車対策の伝統戦法

鳥刺しは、将棋における振り飛車穴熊対策として知られる古くから伝わる戦法です。その名の通り、独特の駒組みが鳥が獲物を狙う姿に似ていることから命名されました。角道を開けずに角行は引き角として活用し、左銀を積極的に前進させるのが特徴です。

基本的な指し方

鳥刺しの基本的な進行は、▲2六歩または▲4八銀から始まり、▲5六歩、▲6八玉、▲7八玉と玉を囲いながら、▲2五歩、▲3六歩と歩を突き進めます。その後、▲6八銀、▲5七銀左、▲4六銀と銀を繰り出し、最後に▲7九角と角を引き、独特の陣形を構築します。相手が四間飛車を指してきた場合の例です。この駒組みは、相手の飛車先の攻めを許しつつ、自陣の守りを固め、中央と敵陣への攻めを準備する効果があります。

歴史と起源

鳥刺しの起源は諸説ありますが、幕末の阿波国出身の四宮金吾が編み出したとする説や、六代大橋宗英が1778年の井出主税との対局をヒントに考案し、1779年の五代伊藤宗印との対局で用いたとする説があります。いずれの説も、当時主流だった左香落ちの対局で、下手（後手）が振り飛車に対して用いる戦法であったとされています。

プロ棋士による採用例

昭和時代には、1943年の朝日番付戦決勝で、木村義雄九段が升田幸三名人に勝利した際に鳥刺しを用いています。この対局は、升田の昇段がかかっており、木村の鳥刺しは升田を苦しめることとなりました。升田自身も、この対局について自戦記で触れ、木村の積極的な攻めを評価しています。その後も、内藤国雄九段が、大山康晴十四世名人などとの対局で鳥刺しを採用するなど、プロの対局でもしばしば見られる戦法となっています。内藤九段は、1982年には『将棋マガジン』誌で「新・鳥刺し戦法」という連載講座も担当しています。

「鳥刺しは端を狙え」

鳥刺しに関する有名な格言として「鳥刺しは端を狙え」があります。これは、鳥刺しの陣形の特徴から、端の攻めが有効であることを示唆しています。鳥刺しは中央の攻めに参加しにくい面がありますが、端を攻めることで相手の守りを崩し、勝機をつかむことができるのです。

鳥刺しモドキ

鳥刺しを応用した戦法に「鳥刺しモドキ」があります。これは、4六銀左戦法の△6四歩型四間飛車に対して、先手が▲3六歩と突いて、▲3五銀～▲7九角～▲2四歩と攻める指し方です。△6四歩型は△6四角がない分、先手の攻撃を受けやすいのが特徴です。

関連戦法

鳥刺しは、嬉野流、村田システム、飯島流引き角戦法、英春流（特にカメレオン戦法）など、他の戦法と関連性を持つ戦法です。これらの戦法を理解することで、鳥刺しの理解も深まります。

まとめ

鳥刺しは、歴史と実績を兼ね備えた、奥深い戦法です。その独特の駒組みと、端攻めを重視する戦略は、現代将棋においても有効な戦術として注目されています。この記事で紹介した内容を参考に、鳥刺しの魅力をぜひ味わってみてください。

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