鳥居忠吉

鳥居忠吉（とりい ただよし）

鳥居忠吉は、日本の戦国時代に活躍した武将であり、三河松平氏（後の徳川氏）の家臣として知られています。彼の生涯については多くの物語が語られ、特にその忠誠心と戦略的な知恵から「三河武士」としての名声を高める要因となりました。

生涯

忠吉は、鳥居忠明の子として誕生しました。彼の生年は明確ではありませんが、彼が死去した際に80余歳であったことから、文明から明応年間（15世紀末）の生まれだと考えられています。彼のキャリアは、三河国の戦国大名・松平清康に仕えるところから始まりました。忠吉以前の当主が松平氏に仕えていた記録はないため、彼が清康が岡崎城に進出した際に家臣となった「岡崎譜代」と呼ばれる家臣の一人であった可能性が高いです。

松平氏は、清康の死後は力を失い、駿河国の今川氏の傘下に入ることが余儀なくされます。天文18年（1549年）には、松平の幼主・竹千代（後の徳川家康）が駿府に預けられ、岡崎城は今川氏の管理下に置かれることとなりました。この時期、岡崎城の治世は今川氏から派遣された城代によるものではなく、忠吉と阿部定吉らが実務を担っていました。しかし、収穫の多くは今川氏への分配となり、松平家は困窮してしまいます。そんな中、忠吉は将来の家康の帰参に備えて倹約と蓄財に努めたと言われています。

さらに、阿部定吉が死去すると、忠吉のもとで松平家臣団は一層結束を強めました。貧しさを経験しながらも戦闘では命を惜しまない姿勢は後世に受け継がれ、忠吉の忠誠心は「三河武士」として名を馳せることになりました。

永禄3年（1560年）の桶狭間の戦いでは、家康に従軍し、今川義元が戦死した後に岡崎城に戻り、蓄えてきた財を家康に見せました。家康はその努力に感謝し、忠吉の忠誠心はますます評価されるようになりました。その後は年齢を理由に岡崎城の留守を守ることとなります。忠吉の忠義に対する姿勢は朝廷にも認知され、永禄11年（1569年）の後奈良天皇の十三回忌に献金を行った際には、特に忠吉に感謝の意を伝える内容が記されています。

最期とその後

元亀3年（1572年）に忠吉はこの世を去りました。彼の長男・忠宗は渡の戦いで戦死し、次男は出家していたため、家督は三男の元忠が継承しました。彼の墓所は、次男が住職を務めていた不退院（愛知県西尾市）にあります。

人物像

鳥居忠吉は家康に対する忠臣として描かれる一方で、実は異常に財を蓄えていた商工業者という一面も持っています。『永禄一揆由来』では「分際宜き買人」と記録され、このことから彼が当時の経済活動にしっかり関与していたことが伺えます。特に三河碧海郡では矢作川を利用した交通の要所であり、経済活動に大きく寄与していたと考えられています。

鳥居忠吉の人物像は、忠誠だけでなく、経済的な知恵にも支えられたものであり、その生涯は今後も歴史の中で語り継がれていくでしょう。

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