鳥濱トメ

鳥濱トメ：特攻隊員の母として

鳥濱トメ（1902年6月20日 - 1992年4月22日）は、鹿児島県知覧で「富屋食堂」を営み、多くの特攻隊員の心の拠り所となった女性です。彼女は、ただ食事を提供するだけでなく、隊員たちの心のケアを行い、出撃を見送る際には、母親のように温かい言葉をかけました。

生涯

1902年、鳥濱トメは現在の南さつま市で生まれました。18歳で結婚し、1929年に27歳で富屋食堂を開業します。1942年、知覧に陸軍飛行場が開設されると、富屋食堂は陸軍指定の食堂となり、多くの飛行隊員が訪れるようになりました。

特攻作戦が始まると、トメは隊員たちの出撃を見送り、彼らが家族に宛てた手紙を代わりに投函しました。また、出撃時の様子を綴った手紙を全国の家族に送りました。これらの手紙は、特攻隊員の生きた証として、遺族にとってかけがえのないものとなりました。

終戦後、知覧飛行場は進駐軍によって破壊されましたが、トメは跡地に慰霊碑を立て、花や線香を供え続けました。1952年には、遺族のための旅館「富屋旅館」を開業し、1955年には特攻平和観音堂の建立に尽力しました。観音像は「知覧特攻平和観音像」と命名され観音堂に収められました。

トメの活動は、当初「戦争賛美」と批判されることもありましたが、彼女は「特攻隊員の慰霊がなぜ悪いのか」と反論し、理解を求めました。彼女の熱意が実り、知覧町も観音堂建立に協力することになったのです。

その後、作家・高木俊朗の著作や歌謡曲『岸壁の母』のリバイバルブームによって、トメの知名度は全国区となりました。「特攻おばさん」から「特攻の母」と呼ばれるようになった彼女は、テレビ番組にも出演し、彼女をモデルにした歌謡曲も発売されました。

1977年には、援護事業功労者として従五位に叙されました。1992年4月22日、89歳でその生涯を閉じました。

鳥濱トメの精神

鳥濱トメは、特攻隊員たちにとって、母親のような存在でした。彼女は、彼らの不安や恐怖を受け止め、温かい言葉で励ましました。また、彼らの遺志を継ぎ、慰霊と平和への祈りを捧げ続けました。

彼女の行動は、戦争の悲惨さを物語るとともに、人間の優しさや強さを教えてくれます。知覧を訪れる人々は、富屋食堂跡や特攻平和観音堂を訪れ、鳥濱トメの精神に触れ、平和への思いを新たにしています。

関連作品

鳥濱トメの生涯は、多くの書籍や映画、舞台などで描かれています。

書籍
『ほたる』（山本真理子作、佐伯和子絵）
『空のかなたに : 出撃・知覧飛行場 特攻おばさんの回想』（鳥濱トメ述）
『知覧いのちの物語「特攻の母」と呼ばれた鳥濱トメの生涯』（鳥濱明久）
映画
『ホタル』（富屋食堂主人・富子役：奈良岡朋子）
『俺は、君のためにこそ死ににいく』（鳥濱トメ役：岸惠子）
『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』（鶴屋食堂の女将・ツル役：松坂慶子、鳥濱トメをモデル）
舞台
『帰って来た蛍』シリーズ（鳥濱トメ役：伊藤つかさ、さとう珠緒）
『MOTHER～特攻の母　鳥濱トメ物語』（鳥濱トメ役：大林素子）

これらの作品を通して、鳥濱トメの生き様や特攻隊員の心情に触れることができます。

関連施設

知覧特攻平和会館: 館内で鳥濱トメのインタビュー映像を見ることができます。
* ホタル館 富屋食堂: 鳥濱トメと特攻隊員の資料館です。

これらの施設を訪れることで、より深く鳥濱トメについて知ることができます。

鳥濱トメは、特攻隊員の母として、そして平和を願う女性として、人々の心に永遠に生き続けるでしょう。

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