鳥羽磯部漁業協同組合

鳥羽磯部漁業協同組合（JF鳥羽磯部）

鳥羽磯部漁業協同組合（JF鳥羽磯部）は、三重県鳥羽市鳥羽四丁目に本所を構える漁業協同組合です。鳥羽市と志摩市磯部町を事業エリアとし、豊かな漁場資源を活かした事業展開を行っています。

組織と運営

JF鳥羽磯部は、総会・総代会、本所、支所の三層構造で運営されています。組合員数は2019年3月31日時点で2,135人（正組合員704人、准組合員1,431人）。職員数は94名、理事は17名（うち常勤4名）、監事は3名（全員非常勤）です。年間の水揚げ高は約50億円に達し、その7割以上が答志島、神島、菅島などの離島の支所管内で水揚げされています。

本所には、代表理事組合長と常務理事のもと、総務指導課、財務課、共済福祉課、購買事業課、直販事業課の5課が置かれています。直販事業課は、直営食堂「四季の海鮮 魚々味」と農水産物直売所「鳥羽マルシェ」を運営しています。また、本所には畜養直販センターが併設されており、JF鳥羽磯部の直販拠点としての役割を担っています。

支所は、鳥羽市内に14箇所、志摩市内に3箇所設置されています。合併当初は22の旧漁協がそのまま支所となりましたが、その後、組合員数が少ない支所の閉鎖・統合が進められています。漁業権は旧漁協の単位を維持しており、組合員であっても他の地区の漁場での操業は制限されています。支所単位で毎月の収支を計算し、未収金が発生した支所には取引停止という厳しい措置を科すことで、組合員の事業者意識を高めています。また、地域文化事業への出資も、赤字の場合は削減されます。一部の支所では、簡易郵便局の運営も行っています。

市場経営

JF鳥羽磯部は、魚市場の運営にも力を入れています。発足当初は9つあった市場を統合し、効率化を図っています。統合市場の建設構想もありましたが、実現には至っていません。2005年には、答志・和具・菅島の3市場を統合した「答志集約地方卸売市場」を開設。衛生管理を徹底し、高鮮度の魚介類を取引しています。また、地元のホテルや旅館が仲買人を通さずに直接水産物を購入できる仕組みも導入しています。

歴史

2002年10月1日に、鳥羽市内の16漁協と磯部町の6漁協が合併し、鳥羽磯部漁業協同組合が発足しました。発足時の組合員数は3,442人で、当時としては国内でも有数の大規模漁協でした。初代組合長には、片山幹夫氏が就任しました。

漁業と漁協の存続が危ぶまれる中、JF鳥羽磯部は、支所単位での収支計算や仲買人との契約見直しなど、様々な改革に取り組んできました。その結果、無借金経営を実現し、組合員への還元も行っています。2006年には、いせしま森林組合と「豊かな森林づくり・海づくり協定」を締結し、森林保全活動にも取り組んでいます。また、密漁対策として監視レーダーを設置したり、直営食堂を開業したりするなど、新たな事業展開も行っています。

近年では、志摩市社会福祉協議会が組合員となり、障がい者によるカキ養殖を行う「水福連携」の取り組みも行われています。

水産物のブランド化

JF鳥羽磯部は、地域ブランド化を推進するため、漁業者の意識改革や衛生管理の徹底に力を入れています。答志島では、鮮度維持のための滅菌海水製氷棟を建設し、漁獲物の衛生的な取り扱いを指導しています。また、鮮度が落ちやすい魚は急速冷凍し、活魚は丁寧に運搬するなど、品質管理を徹底しています。これらの取り組みにより、魚価の向上に繋がっています。

2014年には、「里海を創る海女の会」が「海女もん」を商標登録し、海女が水揚げした水産物にブランドを付与しています。2019年には、和具浦支所が塩蔵わかめの「水産エコラベル」認証を取得するなど、持続可能な漁業への取り組みも進めています。

答志島トロさわら

答志島と菅島で水揚げされる特定の条件を満たしたサワラには、「答志島トロさわら」という地域ブランドが付与されます。漁獲方法や魚体の重さ、脂肪含有量などが厳しく定められており、ブランドを名乗れるサワラはごく一部に限られています。答志島近海で獲れるサワラの脂肪含有率が非常に高いことが判明したため、JF鳥羽磯部や鳥羽市などが連携してブランド化を推進しています。

直販事業

JF鳥羽磯部は、直販事業にも力を入れています。直販拠点として畜養直販センターを設置し、高級魚種を扱っています。また、インターネット通販にも参入しています。直営食堂「四季の海鮮 魚々味」や農水産物直売所「鳥羽マルシェ」の運営も、直販事業の一環です。

四季の海鮮 魚々味

「四季の海鮮 魚々味」は、JF鳥羽磯部が運営する直営食堂です。地元産の新鮮な魚介類を使った料理を提供し、魚食文化の普及に貢献しています。各テーブルには漁法の解説資料が置かれ、魚に関する知識を深めることができます。また、市場で売れない未利用魚の活用にも取り組んでいます。

地域連携

JF鳥羽磯部は、鳥羽市水産研究所と連携し、アワビの生息環境の改善やヒジキ養殖の試行など、様々な事業を展開しています。また、答志支所では、黒海苔の品質向上に取り組み、共同加工場を建設するなど、地域全体の発展に貢献しています。

主な水産物

鳥羽市では、200種類もの水産物が漁獲されます。代表的なものとしては、サワラ（答志島トロさわら）、マダイ、シラスなどの魚類、クロノリ、ワカメなどの海藻類、アワビ、サザエ、カキ（浦村かき、的矢かき）などの貝類、そしてイセエビ、タコ、ナマコなどがあります。

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