鵜飼称斎

鵜飼称斎（うかい しょうさい）は、慶安5年（1652年）に生まれ、享保5年（1720年）に没した江戸時代前期の儒学者です。本名は真泰（さねやす）、字は子権（しけん）、通称は権平（ごんべい）。称斎・松嶺と号しました。儒学者である鵜飼石斎の四男として生まれ、兄には同じく儒学者として知られる鵜飼錬斎がいます。

京都で生まれ育った称斎は、父の死後、兄である錬斎から朱子学や史学を学びました。しかし、称斎自身は特に史学に強い興味を持ち、その才能を開花させます。中国の地誌や歴史に関する書物を好み、『資治通鑑』、『地誌通釈』、『釈文辨誤』といった書物を全て暗記していたという逸話が残っています。このことからも、彼の並外れた記憶力と学問への情熱がうかがえます。

天和3年（1683年）には、兄の錬斎に続いて水戸藩主・徳川光圀に招かれ、江戸にあった彰考館に入ります。彰考館は、光圀が中心となって設立した史書編纂のための施設であり、ここで称斎は200石を与えられ、『大日本史』の編纂事業に携わることになります。

兄である錬斎の死後、称斎はその後を継いで彰考館の総裁に就任するように度々推薦されました。しかし、彼は総裁という地位が修史撰述の妨げになると考え、固辞しました。彼は名誉や地位よりも、学問に専念することを望んだのです。また、女性や趣味、蓄財にも関心がなく、生涯にわたり『大日本史』をはじめとする修史事業にその情熱を注ぎ込みました。

称斎の功績は、『大日本史』の編纂に深く関わったことに尽きます。彼はその卓越した知識と記憶力、そして何よりも学問に対する真摯な姿勢によって、この大事業を支えました。彼の研究成果は、日本の歴史研究に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

彼の墓は、東京都文京区本駒込にある龍光寺にあります。そこには、彼の名と功績を偲ぶ人々によって、静かに墓碑が佇んでいます。

鵜飼称斎は、名誉や地位に囚われず、ただひたすらに学問を追求した人物でした。彼の生き方は、現代の私たちにとっても学ぶべき点が多くあります。知識を追求する姿勢、そして何よりも自分の信じる道を貫く勇気は、私たちに大きな感動を与えてくれます。

もう一度検索