鶴見和子

鶴見和子は、1918年6月10日に東京府麻布区で生まれ、2006年7月31日に88歳でこの世を去った、日本の著名な社会学者です。上智大学の名誉教授として、国際関係論などを教鞭を執る一方で、比較社会学を専門としていました。彼女の学術的な関心は幅広く、特に南方熊楠や柳田國男の研究において、独自の視点と深い洞察を示しました。

生い立ちと学歴

鶴見和子は、政治家である父・鶴見祐輔と母・愛子（後藤新平の娘）の間に、4人きょうだいの長女として生まれました。幼少期を牛込成城小学校で過ごした後、成城学園、女子学習院を経て、津田英学塾に進学。1937年には父の国際会議出席に同行し、初めて海外を経験しました。その後、両親と共にアメリカに渡り、ヴァッサー大学大学院で哲学修士号を取得、さらにコロンビア大学大学院に進むも中退。弟・俊輔と共に日米交換船で帰国しました。

戦後の活動

戦後、鶴見は弟の俊輔、丸山眞男、武谷三男らと共に「思想の科学」同人会議を開き、雑誌『思想の科学』を創刊。この時期には共産党に入党したものの、1950年頃には離党しています。また、「生活綴方」運動の指導者、国分一太郎との出会いをきっかけに、「生活をつづる会」を立ち上げ、自己を含む集団の研究を進めました。

四日市の東亜紡織工場での女子工員らのサークル「生活を記録する会」との交流は、『母の歴史』や『仲間のなかの恋愛』の出版、さらには劇団三期会による集団創作劇『明日を紡ぐ娘たち』の公演へと結実しました。療養生活を経て、父・祐輔の選挙活動を支援したほか、父の看病や借金返済のために自宅を処分するなど、家族を支える姿も見られました。

1962年にはプリンストン大学社会学部大学院に入学し博士号を取得。トロント大学とブリティッシュコロンビア大学で教鞭をとり、帰国後は成蹊大学を経て、上智大学の教授となりました。

晩年と人物

晩年の鶴見和子は、脳出血による左片麻痺で車椅子生活を送りながらも、著作をまとめた『鶴見和子曼荼羅』や対談集『鶴見和子 対話まんだら』を刊行。彼女の知的探究心は、晩年まで衰えることがありませんでした。

和歌や日舞、着物などの豊かな趣味を持ち、それらに関する著書や写真集も出版。生涯独身であり、「萎えたるは萎えたるままに美しく歩み納めむこの花道を」と詠んだ歌のように、学問と実践、そして道楽を一体とした、華やかな生き方を貫きました。

彼女の弟である鶴見俊輔は、和子が父を深く愛しており、「父の娘」であったと語っています。また、皇室との関係も深く、美智子皇后が一周忌の集いに臨席するなど、幅広い層から尊敬を集めていたことがうかがえます。

家族と受賞歴

鶴見和子の家族には、父の鶴見祐輔をはじめ、弟の哲学者の鶴見俊輔、甥の鶴見太郎など、多くの著名な人物がいます。母方の祖父は政治家の後藤新平です。受賞歴としては、1979年に『南方熊楠』で毎日出版文化賞、1995年に南方熊楠賞、1999年に朝日賞を受賞しています。

主要な著書

鶴見和子の著作は多岐にわたり、『パール・バック』、『父と母の歴史』、『南方熊楠』、『内発的発展論の展開』などがあります。これらの著作を通じて、彼女は社会学、文化論、思想史、民俗学など、様々な分野で深い影響を与えました。

鶴見和子は、その生涯を通じて、学問と実践、そして豊かな人間性を兼ね備えた人物でした。彼女の研究は、今日においても多くの人々に影響を与え続けています。

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