鹿ノ谷駅

北海道夕張市鹿の谷三丁目に存在した鹿ノ谷駅（しかのたにえき）は、北海道旅客鉄道（JR北海道）石勝線（夕張支線）に属していた鉄道駅で、2019年の夕張支線廃止に伴いその歴史に幕を下ろしました。嘗ては夕張鉄道線も乗り入れており、両路線の接続点として重要な役割を担っていました。電報略号は「タニ」、事務管理コードは▲132106が付与され、JR時代の駅番号はY24でした。

誕生と交通の要衝へ

鹿ノ谷駅の起源は古く、明治時代の1901年 12月1日に、北海道炭礦鉄道が清水沢駅と夕張駅の間に新たな貨物駅として開業したことに始まります。その月のうちに旅客扱いも開始され、一般駅としての機能を持つようになりました。1906年 10月1日には、鉄道国有法に基づいて北海道炭礦鉄道が買収されたことにより、官設鉄道（後の日本国有鉄道、国鉄）の駅となります。地域の炭鉱開発が進むにつれて、当駅からは石狩石炭による専用鉄道が接続されました。若菜辺砿選炭場へ向かう路線が1908年 10月25日に、熊ノ沢選炭場への路線が1909年 11月6日にそれぞれ開業しています。

1909年 10月12日、国有鉄道の線路名称が制定され、当駅は夕張線に組み込まれました。当駅が地域の交通結節点としての地位を確立したのは、1926年 10月14日に夕張鉄道線が栗山駅から夕張本町駅まで延伸開業し、当駅に接続したことが大きいでしょう。この開業により鹿ノ谷駅は国鉄と夕張鉄道の共同使用駅となり、広大な構内には夕張鉄道の車両区や保線区などが設けられ、両社の運行を支える重要な拠点となりました。

時代の変化と機能の縮小

しかし、石炭産業の斜陽化は駅の役割にも変化をもたらします。まず、石炭関連の専用鉄道は姿を消し、若菜辺専用鉄道は1933年 10月31日に廃止されました。そして、夕張鉄道線も段階的に縮小され、1971年 11月15日には当駅から夕張本町間の路線が廃止され、同時に栗山から当駅までの旅客営業も終了しました。最終的に、夕張鉄道線はその全線が1975年 4月1日に廃止となり、鹿ノ谷駅は再び国鉄単独の駅に戻りました。

貨物輸送の需要減少に伴い、当駅での貨物取扱いは1981年 5月25日に廃止されました。同年10月1日には、夕張線が石勝線に改称され、当駅は石勝線所属となります。その後も駅の機能は縮小が続き、1984年 2月1日には荷物取扱いが廃止され、同年4月1日には無人化されました。

そして廃駅へ

1987年 4月1日、国鉄分割民営化により、鹿ノ谷駅は北海道旅客鉄道（JR北海道）に承継されました。無人駅として、石勝線の一部である夕張支線の駅としての役割を静かに担ってきましたが、夕張地域の人口減少と石炭産業の衰退により、夕張支線自体の存続が困難となります。そして、2019年 4月1日、新夕張駅から夕張駅間の夕張支線が廃止されたことに伴い、鹿ノ谷駅も100年以上の歴史に終止符を打ち、廃駅となりました。

駅名の由来と地域の賑わい

「鹿ノ谷」という駅名は、この地の地名に由来します。かつてこの一帯に多くの鹿が生息していたことから名付けられたとされています。駅周辺の鹿の谷地区は、嘗て北海道炭礦汽船の幹部用住居などが建ち並ぶ高級住宅地であり、また近隣には北海道夕張北高等学校や、前身の夕張工業高校を含む北海道緑ヶ丘実業高校があり、多くの学生で賑わう活気あるエリアでした。

廃止時の駅の姿と周辺施設

廃止時、鹿ノ谷駅は単式ホーム1面1線を持つ地上駅で、無人駅として運用されていました。駅周辺には、鹿ノ谷郵便局や文化施設である夕張鹿鳴館、映画『幸福の黄色いハンカチ』に関連する「幸福の黄色いハンカチ想い出ひろば」などがあります。また、かつて夕張鉄道線の終着駅でもあった夕張本町駅が近隣にあったため、夕張鉄道（夕鉄バス）の本社やバスターミナルも駅近くに位置しており、夕鉄バスと北海道中央バスの「鹿ノ谷駅前」停留所がありました。鉄道廃止後の2019年 4月1日からは、これらのバス停留所は「鹿ノ谷郵便局・夕張鹿鳴館入口」へと名称が変更されています。

駅跡の現在

駅が廃止された後も、その遺構はしばらくの間残されました。2020年4月の時点では、駅舎や広い構内を跨ぐ跨線橋などが確認されています。そして、2022年にはJR北海道から、地域の市民らが設立した合同会社鹿ノ谷駅に駅施設が無償で譲渡されました。これは、地域の財産ともいえる駅跡を保存し、新たな活用を図るための取り組みであり、鹿ノ谷駅は廃駅となった今もなお、夕張の歴史を見守り、未来への可能性を秘めた場所として存在しています。

隣接していた駅は、JR北海道石勝線夕張支線においては清水沢駅（Y23）と夕張駅（Y25）の間、そしてかつて存在した夕張鉄道線においては営林署前駅と末広駅の間に位置していました。

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