鹿島火力発電所

鹿島火力発電所

茨城県神栖市東和田に位置する鹿島火力発電所は、JERAが運営する主要な発電施設の一つです。鹿島臨海工業地帯への電力供給を目的として建設され、日本の高度経済成長期から現代に至るまで、そのエネルギー供給の一翼を担ってきました。

沿革と変遷

発電所は1971年3月、1号機の運転開始をもってその歴史をスタートさせました。その後、順次増設が進められ、最終的に6号機までが稼働。特に5号機と6号機は、それぞれ出力100万kWを誇り、完成当時は国内でも最大級の規模でした。

しかし、1979年に第二次石油危機を受けて採択された「石炭利用拡大に関するIEA宣言」により、原則として石油火力発電所の新設が困難となりました。建設当時の東京電力（現在のJERAの前身の一つ）にとって、当発電所は最後の石油専焼火力発電所という位置づけとなりました。

2011年3月11日に発生した東日本大震災では、地震と津波により複数の発電設備が甚大な被害を受け、全機が運転不能となりました。電力供給力が大幅に低下する危機に直面する中、迅速な復旧作業が進められ、震災発生から約2ヶ月後の5月半ばには全機の運転が再開されました。

震災からの復旧と並行して、供給力強化のため新たな設備導入が進められました。緊急設置電源として7号系列のガスタービン発電設備が2012年夏に稼働を開始。その後、排熱回収ボイラと蒸気タービンが追加設置され、高効率なコンバインドサイクル発電設備へと転換されました。この7号系列の運転開始に合わせ、東京ガスが敷設した高圧ガスパイプラインからの都市ガス供給が開始されました。

2014年6月に7号系列全ての設備が営業運転に入ると、既存設備（当時440万kW）と合わせた総出力は566万kWに達し、一時的に火力発電所としては国内最大規模となりました。しかし、長年の運転を経た1～4号機は2014年度、5・6号機は2020年度から順次長期計画停止となり、2023年3月31日をもって廃止されました。

発電所の運営事業者は、電力システム改革に伴い変遷しています。2016年4月には東京電力から子会社の東京電力フュエル&パワーへ、そして2019年4月にはJERAへと移管され、現在に至ります。

現在の主要設備（2023年3月31日現在）

総出力: 126万kW
敷地面積: 約97万m²
主要設備: 7号系列
発電方式: 1300℃級コンバインドサイクル発電 (Advanced Combined Cycle)
構成: ガスタービン・蒸気タービン別軸構成
定格出力: 126万kW (42万kW × 3基、計6軸)
ガスタービン：27.2万kW × 3軸
蒸気タービン：14.8万kW × 3軸
使用燃料: 都市ガス
熱効率 (低位発熱量基準): コンバインドサイクル運転時 約57%
営業運転開始:
ガスタービン発電設備（緊急設置電源として）：2012年6月～7月
蒸気タービン発電設備：2014年5月～6月

廃止された発電設備（2023年3月31日時点）

計6基、総出力440万kWの汽力発電設備が廃止されました。

1号機～4号機:
定格出力: 各60万kW
発電方式: 汽力発電
使用燃料: 重油、原油
蒸気条件: 超臨界圧
熱効率: 42.7%
運転開始: 1971年3月～1972年4月
5号機・6号機:
定格出力: 各100万kW
発電方式: 汽力発電
使用燃料: 重油、原油
蒸気条件: 超臨界圧
熱効率: 43.2%
運転開始: 1974年9月～1975年6月

これらの設備は全て、2014年度または2020年度から長期計画停止に入り、2023年3月31日付で正式に廃止されました。

アクセス

タクシー: 鹿島神宮駅より約40分、小見川駅より約30分。
高速バス: 東京駅発「かしま号」で鹿島セントラルホテル下車、タクシー約20分。

周辺

鹿島臨海工業地帯の中核に位置し、鹿島石油などの重要施設が集積しています。また、鹿島港を挟んだ対岸には日本製鉄鹿島火力発電所や鹿島共同発電所があります。

関連事項

JERA
日本の火力発電所一覧
火力発電
* 1987年7月23日首都圏大停電（夏季の電力需要急増による大規模停電。当発電所も関連する広域系統の一部）

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