鹿島萩麿:海軍と学問の道を歩んだ夭逝の皇族
鹿島萩麿(かしま はぎまろ)は、
1906年(
明治39年)に
山階宮菊麿王の四男として誕生しました。
華族の身分を有し、母は菊麿王妃常子です。学習院中等科を経て海軍兵学校に進学、1926年(大正15年)に卒業すると、同年に貴族院
皇族議員に就任しました。
海軍
少尉に任官した翌年には、
勲一等旭日桐花大綬章を受章。戦艦『伊勢』に配属され、遠洋航海にも参加しました。航海中には、かねてより関心のあったユトランド海戦の研究に着手しています。この研究は、後に彼の生涯における重要な業績となる『ジュトランド海戦史論』の基礎となりました。
1928年(
昭和3年)には、航空術講習を修了。同年、
臣籍降下を願い出て認められ、鹿島姓を賜り
伯爵に叙せられました。これに伴い貴族院議員の資格を失います。その後、戦艦『榛名』に配属され、
横須賀鎮守府勤務や
海軍大学校での戦史研究などを経て、海軍
中尉に昇進しました。
海軍大学校選科学生として戦史研究に励み、横須賀航空隊にも勤務しました。
しかし、健康を害したため
1932年(
昭和7年)3月には待命となり、静養生活を送るようになります。同年7月には、鎌倉の静養先で生涯唯一の著書である『ジュトランド海戦史論』の序文を執筆しました。この著作は、彼の海軍経験と深い歴史研究の成果を反映したものでした。しかし、同年
8月26日、急性
腹膜炎のため鎌倉の長谷別邸にて26歳の若さで急逝しました。没後、海軍大尉に昇進しました。
鹿島萩麿の死後、彼の遺産は東京養育院と東京養老院に寄付されました。1934年(
昭和9年)には、彼の遺志を継いで兄の
筑波藤麿が後見人となり「
伯爵鹿島萩麿記念奨学基金」が設立されています。同年、『ジュトランド海戦史論』が刊行されました。この著作は、彼が残した貴重な歴史研究の成果として、現在も高く評価されています。
鹿島萩麿は、
華族としての身分、海軍
軍人としての経歴、そして歴史研究家としての顔を持つ、多様な側面を持つ人物でした。短い生涯でしたが、海軍での経験と学問への深い探究心によって、後世に多大な影響を与えました。彼の業績は、単なる海軍史研究にとどまらず、彼の人となり、時代背景、そして日本の近代史を理解する上で重要な手がかりとなります。
彼の父は
山階宮菊麿王、母は常子です。兄弟には武彦王、芳麿、安子、藤麿、茂麿がいます。また、海軍技術大尉の鹿島晃久を養子に迎えています。
鹿島萩麿に関する関連書籍としては、彼の自著である『ジュトランド海戦史論』と、中島隆吉編『
伯爵鹿島萩麿』があります。その他、彼の生涯や業績を知る上で参考となる文献として、『皇室
皇族聖鑑』『貴族院要覧』などが挙げられます。