黄子澄

黄子澄（こう しちょう、1350年 - 1402年）は、明朝初期に活躍した官僚です。本名は湜（しょく）ですが、一般には字である子澄（しちょう）で知られています。彼は袁州府分宜県（現在の江西省宜春市分宜県）の出身です。

科挙に合格し進士となった黄子澄は、斉泰（せいたい）と同期であり、共に建文帝（けんぶんてい）に仕えました。太常寺卿（たいじょうじけい）という要職に任命され、建文帝の信任を得ていました。

黄子澄は、斉泰や方孝孺（ほう こうじゅ）らと共に、藩王の勢力を削減する政策を強く推進しました。これは、皇帝の権威を強化し、中央集権体制を確立するためのものでしたが、諸藩王の反発を招きました。特に、建文帝の叔父であり、燕王（えんおう）であった朱棣（しゅてい、後の永楽帝）は、この政策を自らの権益を侵害するものとみなし、黄子澄らを奸臣と非難しました。

この藩王削減政策は、後の「靖難の変（せいなんのへん）」を引き起こす大きな要因の一つとなりました。靖難の変は、燕王朱棣が建文帝に対して起こした反乱です。建文帝軍は、朱棣軍との戦いに敗れ、1402年（建文4年）に都の南京（ナンキン）は陥落しました。黄子澄は、斉泰や方孝孺らと共に捕らえられ、処刑されました。

黄子澄の死後、明朝が滅亡し、南[[明]]（なんみん）が興ると、弘光帝（こうこうてい）によって、その忠節を讃え「節愍（せつびん）」と諡（おくりな）されました。さらに、清朝（しんちょう）の乾隆帝（けんりゅうてい）も、彼の忠義と公正さを認め、「忠愨（ちゅうかく）」という諡号を贈っています。この諡号は、黄子澄が、君主と国家に忠誠を尽くした人物であったことを示しています。

黄子澄は、その政策と最期において賛否両論がある人物ですが、明朝初期の政治において重要な役割を果たしたことは間違いありません。特に靖難の変における彼の行動は、歴史的に大きな影響を与えました。彼は、その忠義心と、藩王削減という難しい政策を推進したことで、後世にその名を残しています。

参考文献:
明史
明史紀事本末

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