黄海線

黄海線：朝鮮半島を駆け抜けた狭軌鉄道

黄海線は、日本統治時代の朝鮮半島、現在の北朝鮮の黄海道に存在した狭軌鉄道です。その路線は、1919年から1937年にかけて建設され、最盛期には総延長155kmの本線を中心に、多くの支線が運行されていました。

概要

黄海線は、京義本線の土城（現在の開豊）から分岐し、西海岸の海州（現在の海州青年）を経て沙里院（現在の沙里院青年）に至る路線でした。軌間は762mmで、当時の日本の国鉄地方幹線に匹敵する設備と規模を備えていました。最高速度70km/hで運行する快速・急行列車や、石炭・鉱石を輸送する重量貨物列車が運行され、地域経済を支える重要な役割を果たしていました。

特筆すべきは、朝鮮鉄道の762mm軌間路線において、1929年に810形蒸気機関車が導入されるまで、タンク機関車が主流だった点です。そのため、短い区間ごとに給炭水設備が設けられていました。テンダー機関車導入後も、長距離走行を考慮した大型のテンダーは必要とされず、固定2軸の小型のものが使用されました。

沿革

黄海線の歴史は、1919年に三菱製鉄所属の軽便鉄道として上海（三江駅） - 内土間が開通したことに始まります。その後、西鮮殖産鉄道株式会社が事業を引き継ぎ、路線の延伸が進められました。1930年代には、延安、東海州、海州、長淵、甕津など、黄海道の主要都市を結ぶ路線網が完成しました。

1919年5月20日：上海（三江駅） - 石灘 - 内土間が開通（三菱製鉄所属軽便鉄道）。
1920年4月21日：上海 - 内土間を西鮮殖産鉄道株式会社が引受。
1920年12月21日：砂里院 - 上海 - 載寧間が開通（西鮮殖産鉄道株式会社線）。
1921年11月16日：載寧 - 信川間が開通（西鮮殖産鉄道株式会社線）。
1924年9月1日：石灘 - 未力間が開通（朝鮮鉄道所属黄海線）。
1925年9月1日：未力 - 新院 - 下聖間開通。
1929年11月1日：信川 - 水橋間開通。
1929年12月21日：新院 - 鶴峴間開通。
1930年12月11日：鶴峴 - 東海州間開通。
1931年12月21日：東海州 - 延安、東海州 - 龍塘浦（海州港駅）間開通。
1932年9月1日：延安 - 土城間開通。
1933年7月1日：東海州 - 海州間開通。
1934年5月11日：西邊駅（東浦駅）開業。
1936年12月11日：海州 - 翠野間開通。
1937年1月21日：水橋 - 長淵間開通。
1937年5月10日：東浦 - 鼎島間開通。
1937年5月19日：翠野 - 甕津間開通。
1944年4月1日：国有化され、長淵線、砂海線、内土線、下聖線、土海線、甕津線、鼎島線に分離。
1944年10月1日：黄海本線の開通により、既存の下聖駅は「旧下聖駅」に駅名変更。

国有化とその後

1944年4月1日、黄海線は朝鮮総督府によって買収され、国有化されました。同時に、路線名が長淵線、砂海線、内土線、下聖線、土海線、甕津線、鼎島線などに分離・変更されました。

現在、黄海線の路線は標準軌に改軌され、黄海青年線、殷栗線の一部区間、長淵線、甕津線、白川線として運行されています。ただし、改軌の過程で一部区間は廃止・移設されています。

駅一覧

以下は、1944年4月1日時点の駅一覧です。

長淵線：沙里院駅 - 長淵駅（載寧 - 水橋間は現在殷栗線の一部区間）
沙海線：三江駅 - 海洲港駅
内土線：花山駅 - 内土駅
下聖線：新院駅 - 旧下聖駅
土海線：土城駅 - 海州駅（韓国戦争以前は大韓民国の列車が土城駅から青丹駅まで運行。泉決駅～迎陽駅間で北緯38度線を跨ぎ、迎陽駅～海州駅間の各駅は北緯38度線以北に位置）
甕津線：海州駅 - 甕津駅
鼎島線：東浦駅 - 鼎島駅

関連作品

小説家 李箱は、短編小説「지팡이 역사」で黄海線の機関車を描写しています。

黄海線は、朝鮮半島の近代化に貢献した重要な鉄道であり、その歴史は、日本の植民地支配という負の側面も抱えながら、地域の発展を支えた人々の記憶とともに、今もなお語り継がれています。

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