黄玹

黄玹（ファン・ヒョン）

黄玹（ファン・ヒョン、こう げん、1855年12月11日 - 1910年9月7日）は、李氏朝鮮の末期に活躍した士人かつ儒学者であり、韓国においては国を思う士として高く評価されています。号は梅泉（メチョン）で、本貫は長水黄氏です。同族には歴史学者の黄義敦（ファン・ウイドン）もいます。

生涯

黄玹は全羅南道光陽で生まれ、求礼で育ちました。1892年の春、彼が生活していた時期に雲峴宮で発生した大規模な火薬爆発事件がありました。この事件は、複数の建物に火薬が仕掛けられているというもので、黄玹は閔妃がその黒幕であり、これは大院君一家を標的にした陰謀だと主張しました。

彼は科挙に合格しましたが、壬午軍乱や甲申政変を経験。特に、清国の干渉政策によって守旧派の政権への失望感が強まり、故郷へ帰ることとなりました。その後、丁若鏞の著作を研究し、高宗や閔妃について開化的な視点から厳しく批判しました。

黄玹は西洋に対する防衛のために近代化の必要性を説き、次世代の教育にも力を入れました。また、既存の儒教的な史観に固執せず、為政者の実態や官吏の腐敗を強く批判した著作『梅泉野録』を編纂しました。この書は韓国近代史の重要な資料として高く評価されています。

1910年、日韓併合条約が結ばれたことに深い悲しみを抱いた黄玹は、条約締結から1週間後、求礼の自宅で服毒自殺という選択をしました。彼の最後の言葉を綴った詩『絶命詩』は、張志淵が主筆を務める『慶南日報』に掲載されましたが、これが慶南日報筆禍事件を引き起こしました。この事件により、朝鮮総督府警務部は必要性を感じたため同紙に停刊処分を下しました。

死後

彼が亡くなった後、1962年に韓国政府から建国勲章が追叙されました。求礼にある黄玹の旧宅跡地には、彼を偲ぶために影幀と位牌が納められた祠堂・梅泉祠が建設され、また遺品を展示する遺物館も設けられています。

著作

『梅泉野録』（매천야록）

黄玹の著作の中でも特に重要なものが『梅泉野録』です。この書は編年体で歴史を記録しており、高い史料価値を持つ文献とされています。大院君政権の始まりから1910年の日韓併合に至るまでの重要な出来事が記されていて、李氏朝鮮末期の研究においては欠かせないものとなっています。

この書は、内政や外交上の重要事件、各政権の実態、科挙の不正、民衆や民族運動、地方官の腐敗、さらには文化や風俗に至るまで多岐にわたり、非常に包括的です。また、黄玹は清国に対して期待を寄せつつも、日本軍の行動に関しては意外にも評価を下しており、清国軍との比較において日本軍は良好であったと記しました。

『梅泉集』（매천집）

彼の遺稿集として出版された『梅泉集』も、彼の思想や視点を知る上で重要な資料です。これらの著作を通じて、黄玹は当時の社会に対する鋭い洞察を提供し、後世に大きな影響を与えました。

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